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兼本貴司が地元・広島でゴルフ伝道師に(2月26日)
日頃の鍛錬のたまものだ。
普段から、廊下ですれ違う来賓にも丁寧に腰を折り、大きな声で挨拶できる。
上野恵美子・校長先生が、ここ広島県の竹原市立吉名小学校にやってきたのは3年前。
赴任して早々に感じた。
「どこかおざなりな挨拶しか出来ない子が多い。これではいけない。子供たちが社会に出たときに、困らないでも済むマナーを今から身につけさせたい」。
さっそく取り組みが始まった。
毎月第1週に制定された「食事のマナー週間」もそのひとつだ。
心をこめて「いただきます」「ごちそうさま」の、挨拶を言う。ご飯一粒まで残さないのはもちろん、必ず食器を持ち上げ、背筋を伸ばしていただく。最初は5級から、名人とさらに最上級の“達人”まで段階がある学校独自の「お箸のマナー検定」など、さまざまな方法で美しい作法を覚えていく。
基本を教え込まれた子供たちは、みるみる成長していった。生活態度まで変わってきたのだ。
「なんでも意欲を持って、取り組める子が増えていったんです」と上野先生は、その効果を挙げる。
今回のスナッグゴルフの導入に踏み切ったのも、その延長線上にあった。
上野先生ご自身は、まだゴルフをプレーしたことはない。同校への寄贈が決定したとき勉強のためにと、ホームページをいろいろ検索してみて分かった。
「相手への思いやりの気持ちなど、共通することばかりで。私どもがこれまで取り組んできたことと、ゴルフはつながっていたんです。すごく縁を感じましたね」。
子供たちの礼儀正しさは、行き届いた指導のたまもの。そうかといって、そういう学校にありがちな、堅苦しさが微塵もないのは、上野校長をはじめ、先生方に愛があるからに違いない。
いよいよ“伝道師”が登場した。兼本貴司が姿を現した途端、子供たちの目がいっせいにキラキラと輝いた。兼本が指導に当たるたび「よろしくお願いします!」ときちんと挨拶出来る折り目正しさのあとは、どの子も無邪気そのもの。
パター練習で、みな10点満点の的当てに躍起になり、アプローチ練習では100点満点を目指し、プロによるフルショットのデモンストレーションでは揃って口をあんぐり。
たちまち奮起して、「僕もプロみたいに飛ばす」と腕をまくった。
誰がプロと対戦するかを決めるじゃんけん大会でも大騒ぎだ。
権利を得た6年生の伊藤義就(よしなり)くんと4年生の三宅佳穂(よしほ)さんは、全校生徒からやんやの声援を受けて、奮闘した。
早々と4打で“ホールアウト”した兼本に勝つには、最初に2つのハンディをもらっている2人はなんとしても「5」で上がらなければいけない。
なのに5打目も大きく的をオーバーさせてしまった伊藤くんは、地団駄を踏みながらもプロの技に舌を巻いた。「どんな場面でも堂々とプレーしていて凄い」と感嘆の声を上げた。
三宅さんは、もはや自分が何打で上がれたかも分からなくなってしまった。
「緊張してしまいました・・・」と照れくさそうに、それでも「初めてのゴルフは難しかったけど、兼本プロが優しく教えてくれたから、凄く楽しかった」と、嬉しそうだった。
最後に3人で、互いに健闘をたたえ合う握手を交わして「ありがとうございました!」。
「プロと戦って、ゴルフのマナーも覚えられた」と喜んだ伊藤くんは、いまは野球に夢中だが、「これからはゴルフも頑張りたい」。
これを機に、子供たちにはまたひとつ、大好きな種目が増えた。