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キヤノンオープン 2010

横田真一は長男の声援に発奮

谷原秀人と石川遼と並んで首位タイで最終日を迎えるというのに、「今日も大したことないです」とか、最終日を競馬にたとえて「僕が馬券を買うなら、間違いなく谷原と遼くんを買う」とか、または、9月のフジサンケイで「81」を打ったり、パナソニックオープンでは「79」と、近ごろの最終日に「雑になる」という自身の大叩き記録を持ち出して、「明日も80なら30位くらいで済みますかね」とか。

そして極めつけは「最終日に一番期待しているのは大雨で中止になること。心の底からそう思ってる」なとど、会見では相変わらず、後ろ向きな言葉しか出てこないリーダーに、後方の席から鋭い質問が飛んだ。

「今日は自分の思った力を出せたのですか!?」。
面食らって、応える。
「出せました。十二分に出せました。7番でOBを打ってダブルボギーから、よく持ちこたえられた」。

満足そうに頷いた質問の主は、何を隠そう7歳になる愛息の知己くん。応援に駆けつけたこの日は、プレーを見届けたあとは会見場までついてきて後ろの席で、お父さんの話を聞いていたのだ。
そのあとも、親子の押し問答が続く。

「お父さんにはちょっと嫌な部分もあるんです。露天風呂を作るとか、車が欲しいとか言うところです」と息子にばらされては、正直に打ち明けるしかあるまい。

妻の夕子さんと約束したのは昨シーズン。
「5位に入ったら、山梨の別荘に露天風呂を作ってもいいよ」。
しかし1年以上経った今も、それすら実現出来ていない。
大好きな車も「そんなに良いものでなくてもいいから、新しいのが欲しいです」と欲張る父親に、息子が再び鋭い一撃だ。
「それなら1位になればいい!」。
そうまで言われれば、あとはもうただ頷くしかない。

2006年以来となるシード落ちの危機を迎えた今年は、近ごろでは「ラウンド中も、第二の人生を考える」と、なんとも頼りない父親は、無邪気な息子の笑顔を見るにつけ、「来年も子供を養っていけるかどうか・・・」と、青息吐息。

だが息子の励ましには、気合いを入れないわけにはいかない。
「お父さんの優勝を見てみたい」。
前回のツアー初優勝は1997年の全日空オープンから数えて13年0ヶ月と19日のブランクは、もし今週勝てば過去に13年2ヶ月21日ぶりにツアー2勝目をあげた長谷川勝治に次ぐ記録となる。

2勝目の厚い厚い壁。当然、知己くんにも初めて見る父親の優勝シーンとなる。「僕、お父さんが優勝したら、きっと泣くよ」。
息子の気持ちは無視出来ない。

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