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最終日は藤田寛之が登場
前日の諸藤将次に引き続き、この日も大盛況。開始の1時間も前から出来た長い列の先頭に、その人はいた。
都内にお住まいの三田匡人さん、38歳。それまでゴルフは付き合いでたしなむ程度。「実はトーナメントというものにも、興味はなかったんです」。それが、今年は「日本ゴルフツアー選手権 Citibank Cup Shishido Hills」をはじめ、近郊で行われる大会のほぼすべてを網羅しようと、今から1年のスケジュールを立てるまでになった。
そのきっかけが藤田である。
昨年、2年連続で有終の美を飾った「ゴルフ日本シリーズJTカップ」。大会史上15年ぶり5人目の連覇達成は、前年に引き続いて谷口徹との激しい一騎打ちというスリリングな展開に、親友の誘いでたまたま観戦に来ていた三田さんをも虜にしてしまった。
決着の瞬間を見届けたくて、夢中で18ホールをついて歩いた。そして偶然にも、最後に藤田が投げたウィニングボールが、その手にすっぽりおさまったときには、心をすっかりわし掴みにされていた。「プロってすごい。藤田さんはすごい」。自身も40歳という年齢を目前にしていることも、憧憬の念に拍車をかけた。「藤田さんが戦う姿を、もっと見てみたいと思うようになったんです」。40歳を前にして、すっかり男子ツアーにハマってしまった。「草食系、なんて言われてる場合じゃない。僕も藤田さんみたいに頑張る」。38歳に、生き方を変える決意をさせた。
三田さんが差し出したウィニングボールにサインをしながらそんな告白をされて、“アラフォーの星”もグッときた。「数字より、まず人を感動させるプレーをすること」。日頃から口癖のように言う藤田にとってはなおさら励みとなる“再会”だった。
「いつまでも、若々しいところも好き」と、三田さんも言われるように、いつまでも憧れの存在でいるためにも、このオフはランニングの回数を週2から週4へ。所要時間も10分増やして、1日40分に。スイングのキレを維持するためというのは実は二の次で、一番の目的は「35歳を過ぎてから気になり出した、お腹のお肉を取る」ためだ。
プロたるもの、やっぱり見た目も大事。「かなりきつくて、どっかで挫折するかも」と悲鳴を上げながらも「時間があるときは、毎日でも」と、自らにムチ打つのはプロとしての姿勢にこだわるから。
「少しでもさぼると、精神の妥協にもつながる。プロとして、あるべき姿を貫きたい」と、ランニングで息が上がったままスクワットやベンチプレスなどの筋トレに、「瞬発力を高める目的で」と縄跳びや短距離ダッシュ、ハードル跳びなど、多岐なメニューで徹底的に身体をイジメ抜く。
43歳。「やらないと、すぐにダメになる」。1月はみっちりハワイ合宿で、すでに真っ黒。筋肉量も増えて、体重は現在72㌔。ウェストに合わせてズボンを選ぶと、尻や太もも周りがきつくて入らないので、83センチをはいている。今年もますますパワーアップして、観客を魅了するつもりだ。
12時からの予定も、「ファンのみなさんが、たくさん待ってくれているから」と、5分前倒しでスタートしたサイン会。このあと、他のブースでイベントの予定がつまっているからと、マネージャーには「30分限定で」と念押しされていたにもかかわらず、時間を過ぎてもいっこうに途切れることのない列に、最後まで笑顔で応じ続けた。
12時も40分をまわったころに、再びJGTOブースのそばを通りかかった三田さんがびっくりしたようにつぶやく。「まだやってたんですね! サービス精神旺盛だなあ・・・・・・」。それこそが、40歳を超えてなおファンの人気を集める最大の理由でもある。