大会初日の25日に誕生日を迎えたばかりの23歳が、３日目に大爆発をした。朝一の１番でいきなりボギーも意に介さず、２番からの３連続バーディで完全に払拭すると、圧巻は後半の15番だ。

「スプーンでカットに打って、風とケンカさせた」という２打目はカップをかすり、あわやアルバトロスの1.5メートル。楽々沈めるイーグルで、一気に優勝争いに加わった。
この日のグリーンも速さを示すスティンプメーターが、14.25フィートを記録した。
「まな板」とか、「ガラスのよう」と表現される高速グリーンに対応して、水曜日にきゅうきょ、シャフトの重量を10グラムほど重くした。
「今までのでは、軽すぎたのでね」。

重さを感じながら打つことで、打ち過ぎを防ぐことが出来る。
17番では５メートルのパーパットも拾うことが出来た。

ルーキーイヤーの今年は、参戦５試合目の６月の「日本ゴルフツアー選手権 Citibank Cup Shishido Hills」でツアー初優勝を飾るなど、序盤は破竹の勢いも、中だるみ。

「去年まで学生で、授業のない日は昼まで寝たり。こんなに試合が続くこともなかった」。
しかし、プロともなればそうもいかない。
「月曜日に移動して、火曜日に練習ラウンドをして、水曜日はプロアマ。毎週、そのオンパレード」と、息つく間もない日々にテンションは急降下。

「こうして毎日出させていただけるのはありがたい。でもこうも続くと、今日もまた試合か、と…」。
げっそりしてコースに出ていくこともあり、そんな生活リズムには、いまだに慣れない。
ゴルフの状態は悪くない。体調も万全。
ただ「脳みそ、神経的なものが一番だと思う」と、気持ちの持っていきように戸惑いを感じていた矢先に、今週は「嬉しいサプライズ」に、久しぶりに闘争心を刺激された。

初日の誕生日に合わせて、大会関係者から贈られたのは、特大の誕生日ケーキ。
甘いものには目がない。
ろうそくを吹き消すなり「いいですかあ！？」と目を輝かせた。さっそくカットして、通常のショートケーキなら、４個分ほどの大きさをぺろりと平らげ「元気出ました」。

３日目にして優勝争いに加わったのは、スイーツの力。
それと「今日は地元の奈良からたくさん、応援に来てくれましたのでね」。
デビュー年に２勝以上をあげた選手は、81年の倉本昌弘だけ（73年のツアー制度施行後、外国人選手を除く）。藤本が勝てば史上２人目。
「明日も、今日と同じくらいのゴルフをしないといけませんね」。
快挙達成が待たれる最終日こそ、地元関西の声援を力に変える。

• 

• 藤本 佳則
• 倉本 昌弘