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目指せリオ五輪!! 選手育成の強化合宿は3日目

3日目にして、明らかに効果が出てきた。まず音が違う。選手たちの足音が軽やかだ。トレーニングウェアがこすれあう音にも、確かにキレが出てきた。劇的な変化も、まずはそんな些細なところから現れるものだ。

日本ゴルフツアー機構(JGTO)主催の「JGTOゴルフ強化セミナーin宮崎フェニックス・シーガイア・リゾート“2016年リオデジャネイロオリンピックを目指して”」

28日から始まった、いわば選手育成の強化合宿は、この日も早朝7時前のウォーミングアップから始まったが、初日はついていくのもやっとの選手でも、今や蹴り上げる足の高さも、屈伸時の柔軟性も、格段に良くなった。

この日30日から、いよいよ講師陣に合流した、コンディショニングスーパーバイザーの廣戸聡一氏も満足そうに、改めて太鼓判を押した。

「僕が計画するトレーニングメニューは、後半になればなるほど早く走れたり、体の柔軟性が上がるようになっています」。

ツアー2勝の横田真一も師事する。人間の体には、4つのタイプがあると定義する「4(フォー)スタンス理論」の提唱者だ。廣戸氏のもとには、いまも世界中から指導のオファーが引きもきらない。
つい前日までは、米フロリダにおられた。ここでも、教えを請う人々が列をなしたが、つっぱねて帰ってきてくださった。当地で開かれたPGAショーで得た最新のゴルフ事情も手土産に、その足でツアープレーヤー30人が待つ宮崎県に駆けつけてくださった。

そして約束してくださった。
「この合宿が終わるころには、みなさんのゴルフが世界の最先端になっています」。

とはいえ廣戸氏の言わんとするところはそんな難しいことでも、大仰なことでもなく、「万有引力の法則と同じで、ものすごくシンプルです。みなさんには自然の法則に従って、やってもらえればそれでいい」と廣戸氏は言う。

本来、ゴルフを始めたころには誰でも自然と、自分の体に合った動きをしてスイングしている。
それが、もっとも理にかなっているからだ。
だが、それもしばらくすると、廣戸氏の言葉を借りれば「“俺流”や“俺風”を取り入れてオリジナルを作ろうとしてしまう。それで、皆さんすっかり混乱して調子を崩してしまうんです」。
または、親切に「それはそうじゃない」と、アドバイスをしてくれる人が周囲にいるのはいいのだけれど、本来の体の動きとは違ったスイングを押しつけられるものだから、スランプにも陥る。

実際に、練習場で廣戸氏にほんのひとことふたことかけてもらっただけで、「今までと全然違う!」とか「こっちのほうが、断然に振りやすい」とか「俺、間違ったことを教えられてたんだ・・・」と、驚嘆の声を上げる選手たちが続出した。
「シンプルなことを、シンプルに受け止めて、あとはシンプルに振り抜くだけ。それだけでいいんです」と廣戸氏。

誰でもが、受講できるわけではない。この強化セミナーに参加したからこそ。フェニックスカントリークラブの練習場での廣戸氏の“青空講義”に、目から鱗が落ちまくった選手たちは、喜々として午後からのラウンドに出ていった。
この日はそのほか午前中に、ゴルフジャーナリストで僧侶の三田村昌鳳氏が、「社会人としての自覚」というタイトルの講義の中でひとつ、言われたのは「人にはそれぞれその人に合った器がある」ということ。

選手たちもそれぞれ大きさも形も異なった器を持っていて、その中身を自分のゴルフで一杯に満たせばいいものを、とかく人は他人の器を羨ましがったり、勘違いをしたりして、自分とは異なる大きさや形の器に、技術や理論を無理矢理に詰め込もうとする。

しかし、それではいくら努力を重ねても、うまくいくわけがない。
まず己を知ること。そして自分のやり方に自信を持ち、確固たる信念の上で、日々の研鑽を積み重ねること。
三田村氏と廣戸氏の講義には、はからずも相通ずるものがあった。

五輪のための強化セミナーの第1回目は、これが3日目。2月1日には、いよいよ最終日を迎える。いよいよ5日目には参加した選手たちに、どれほどの変化が起きるているか。誰よりも楽しみにしているのはきっと、日に日にきつくなる筋肉痛にも耐えてやり抜いた選手たち自身だ。

  • アメリカ出張からその足で、強化セミナー地の宮崎に駆けつけてくださった廣戸氏(左)にさっそく質問をぶつける選手たち
  • 午前中はゴルフジャーナリストの三田村氏による講義。二足のわらじを履く氏は、もうひとつの顔、僧侶ならではの視点からも、鋭く選手たちに切り込む
  • 今回の強化セミナーにアドバイザリースタッフとして加わって下さった鷹巣南雄プロ。青木功とは中学の同級生でライバル!今は石川を生んだ杉並学院高ゴルフ部監督も務める

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