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フジサンケイクラシック 2012
岩田寛は「明日は運」
先週の大会で一緒に練習ラウンドを回ったベテラン湯原信光に言われた。「多少のミスなら自分を許してやれ」等々の叱咤激励で、「気持ちが凄く楽になったので」。
この日も、強い雨が降り出したあたりからボギーが立て続いて、7番で池。9番で3パットを叩いて、「このときも怒ったんですけど。10番で気持ちを切り替えよう、ティショットをフェアウェイに置いて2パットで行こう、と思えた」という。
7月のサン・クロレラ クラシックからスペックを変えたというドライバー。
「思ったようなプレーが出来るようになった」とクラブとのマッチングも、怒りを引きずらずに済むようになった要因のひとつに挙げる。
「前のドライバーは、そう思っても曲がっちゃって、そのままズルズル行ってたんですけど」と、そこまで言って、「前のに文句言ってるみたいになっちゃうので。これでやめときます」と、律儀な面を垣間見せる。
最終ホールで1メートルのパーパットを外して東北福祉大の1年下の藤島豊和に追いつかれ、プレーオフで破れたのは2008年。「あのころは、良いスコアを出すことになぜか罪悪感があったんです。それでブレーキがかかったり、優勝することに対してもそう」。
それがなぜなのかは、本人にもうまく説明出来ないようだが、「でも今回は、生まれて初めて罪悪感を感じないでやれている」。
あのとき逃した絶好のチャンスは、確かに「悔しかった」には違いないが、「今はあのとき勝たなくて、良かったとも思っている」。プロ転向から5年目の初Vを果たしていたら「調子に乗って、あのあとシードを落としていたかもしれない」。
普段は口数も少なく、大好きなカラオケも「そこに知らない人がいたら絶対に歌わない」と、人見知りな面をうかがわせるが、仲間内ではめっぽう愉快な性格。
夕食で待ち合わせていた店で、わざと隣の知らないグループの席に座って「待たせてごめん」。そんなちっさないたずらも大好きだ。
後半は雨もやみ、14番でグリーンの手前からチップイン。18番は、156ヤードを9番アイアンで4メートルにつけてバーディ締めに、2位タイまで浮上して「この3日間は、今までとは違う」。
最終日最終組に、もはや勢いを遮るものは何もない。
「でもまあ、明日になれば分かんないけど。勝ったことがないもんで」。
2打差の逆転初Vも「明日は運」と、いつものように本心は煙に巻いた。