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3連覇ならず……。
先陣を切った藤田&片山ペアが最終9番で10メートルもの長いバーディパットを決めて、2ポイント先取もむなしく、我らが誇る池田&石川の若きペアが、中嶋&渡辺チームに大敗した。
18歳の賞金王は得意のドライバーに冴えがなく、賞金ランク2位の若大将には持ち味のアイアンの切れがない。17番で池、さらにバンカーにボールが埋もれる不運も重なり最強チームを持ってしても、いぶし銀のゴルフに敵わなかった。1日競技になった今年は、前半で早くも3ポイントのリードを許したことが痛かった。
午後からのシングルス戦は選手会長の宮本も加わって、最後まで揃って逆転を信じて善戦したが、今年は奇跡は起こらなかった。
3連覇どころか最終組の石川が、最終ホールでシニアの尾崎健夫にタイで並ばれて計12ポイントは、わずか0.5ポイント差で女子にも負けた。
合計12ポイントしか稼げずに、2006年大会以来の最下位に沈んだ。
中嶋常幸が「勇太と遼くんたちにはまだ早いよ、勝たなくていいよ〜と、前半のうちに魔法をかけておいたんです」と、謎めいたコメントを残したように、敗因はやはり口達者なシニアの“口撃”によるところが大きいといえようが、もちろんそれだけではない。
シニアといえど、平均178センチの長身揃いは、長年の経験と巧みな戦術のほかに、50歳を超えていまなおパワーすら兼ね備えているばかりか、初のタイトル獲りで心をひとつにして、チームワークも抜群だった。
特に石川は、ジェットのアイアンショットに惚れ込んで、「このオフにぜひ教わりたい。よろしくお願いします」と、敵に願いを請う始末。
そして、初出場の藤田は「僕も40歳。そろそろシニアのほうが近くなってきて」と、親近感すら沸く始末。
「人間的にも幅があって。みなさん、言葉の余裕っていうんですか。また悪く言えば口の悪さ」と、皮肉のひとつも忘れず加え、それでも「僕もみなさんのようなシニアを目指したい」と、最後にきちんと敬意を表した。
やはり初出場の池田は「中嶋さんと、渡辺さんにけちょんけちょんにやられました」と悔しげに、「また来年も必ずここに戻ってきてリベンジしたい」と、メンバー全員の気持ちを代弁した。
ゲームにこそ敗れはしたが、今大会の第一の主旨は「for CHILD CHARITY」だ。大会の入場券収入や、選手が獲得した賞金の一部は難病を抱える子や、家庭環境に恵まれない子供たち、また未来を担うジュニアゴルファーたちのために、使われる。
3年連続3度目の出場を果たした片山はつくづくと感じている。
「ゴルフファンのみなさんの中にもその精神が年々浸透している」。
現に、この日駆け付けたギャラリーは9716人。当初の予想を大きく上回るご来場に、朝夕はコース周辺の大渋滞など大変なご迷惑をおかけしたが、それもまた「大会のテーマが定着してきている証し」のひとつと片山には思える。
選手会長の宮本もまた渋滞に巻き込まれた一人で、そのために全体のスタートが20分遅れるという失態を演じて終始平謝りだったが、そんな苦いハプニングを経験してまでも、参加する価値がこの大会にはある。
大好きなゴルフで、誰かの役に立てること。その喜びは何ものにも変え難く、だからこそ宮本はメンバーに失笑されながらも、こうアピールせずにはいられなかった。
「また来年もぜひ参加したい。微力ながら、また少しでも貢献出来たら」。
そしてその気持ちは老若男女問わず、出場全選手が抱いた気持ちでもある。
「負けましたけど、今年も社会に貢献する機会が持てて光栄です。チャリティやジュニア育成に、少しでも役立てたことが嬉しい」(石川遼)。
勝っても負けても、参加したみんなが必ず豊かな気持ちになれる……。そんなイベントは、そうめったにあるもんじゃない。
■JGTOチーム(男子)紹介
石川遼(賞金ランク1位)
池田勇太(同2位)
片山晋呉(同4位)
藤田寛之(同5位)
宮本勝昌(同27位)