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マイナビABCチャンピオンシップゴルフトーナメント 2011

富田雅哉は師匠の前で

単独首位に躍り出て、にわかに目につくようになったテレビカメラが自分のほうへ近づいてくるたびに、気が引き締まる。レンズの向こうで、師匠が見ている。そればかりか、ひょいとした拍子に「カメラから出てきて話しかけてくるのではないか・・・。ドキドキした」。そう思えばなおさら、無様なプレーは許されない。

富田が気を張った。前半は2つのバーディで折り返すと、後半は6番からの3連続を含む5つのバーディ。最後の9番は、左ラフから「寄らず入った!」。4メートルのパーパットをしのいで、ボギーなしの65でまとめてきた。

ひょんなことから先月から教えを乞うようになった山本幸路(やまもとこうじ)コーチは、関西オープンで優勝経験もあるプロゴルファーだ。

「解説がすごくわかりやすくて、教え方がとても丁寧」と、これまでは一度も正式にコーチについたことがなかった富田にも共感出来る部分が大いにあった。ちょうど、富田が持ち球のドローボールをうまく打てずに悩んでいるときで、山本のアドバイスで劇的に、調子を取り戻すことが出来た。

また、現在賞金ランキングは75位と、5年間守ってきたシード落ちの危機を迎えている富田には、契約メーカーのスタッフを通じて師匠からの伝言が届いた。

「ショットも、パットも全部同じリズムで打て」とアドバイスをくれた田中秀道が今大会でツアー初優勝をあげたのは95年。18番グリーンで、泣き崩れた田中。その肩にそっと手を添えた少年。それが当時、中京商業高3年の富田だ。
「感動した。勝つっていいな、と」。プロ入りの夢がいっそう膨らんだ瞬間。そういう意味でも富田にとって、忘れがたいのがこのマイナビABCチャンピオンシップである。

その大会で今年は田中が、人生初のテレビ解説をつとめている。カメラの向こうから、じっと弟子の雄姿を見つめている。
週末もそれを意識しないではいられない。「ショットは良くなってきたので、いかに平常心でやれるか。良い流れになるよう、1打1打丁寧にやりたい」。身長185センチはいつも田中に、「体に恵まれたお前は、小さい選手と同じ工夫と努力をすれば、最強の選手になれる」と口を酸っぱくして言われる。師匠の厳しい視線も力に変える。

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