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日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills 2014
竹谷佳孝(たけやよしたか)が23パットを記録、自身初の首位浮上
地元山口県の小倉にあった九州ゴルフ専門学校の体験入学の際にも「プロ級」と褒められた。「昔から、パットでは悩んだことがない」。カップの縁にぶつけて入れる。「その分、外せばとんでもなくオーバーもする」と笑う。強気のパットは初めてクラブを握ったころから、変わらない。
天性のタッチも、宍戸に来て3年目のハウスキャディさんの言うとおりに打てば、もはや鬼に金棒。昨年もバッグを運んでくれた。竹谷が勝手にあだ名をつけた。「チッキー」こと志築美香さんの読みは完璧で、「迷わずに打つことが出来る」と、足並みもぴったりと難コースを仲良く歩く。
気を失うほどの腰の痛みに襲われたのはキャプテン就任直後の秋。宇部鴻城高校2年のことだった。救急車で担ぎ込まれたまま、野球の道は諦めるしかなかった。
父親の勧めでゴルフに転向しても、友人と専門学校の屋内練習場に泊まり込みで「24時間耐久ゴルフ」などと称した寝ずの打ち込みも、その一因か。手首を痛めるなど、プロ転向後もケガに泣かされ続けた。
「それでも耐えて、耐えて、コツコツと地道に頑張ってきた」。昨年のチャレンジトーナメントは最終戦「JGTO Novil FINAL」で初優勝。賞金ランクは2位で今季前半戦の出場権を勝ち取り、「努力が実ったと、嬉しかった」。芽生えた自信がいっそう強まったのは、今季3戦目の中日クラウンズ。
練習ラウンドで回った谷口徹が「おまえ、ちっさいのに振り抜きがすごくいい!」。身長169センチ。(谷口さんも、変わらないじゃん)と、言いたいところをぐっとこらえて、「今のは・・・褒めてもらったんですかね?」。「もちろん、今のは褒め言葉ですよ」とは、谷口の専属キャディの石井恵可さん。
嬉しかった。グリップの先端を、常にボール1個分ほど余らせて短く握る独特のスイングも「自分は自分のスタイルでやればいいんだと思えた」。今年1年を戦い抜く覚悟も出来た。
ツアープレーヤーNO.1決定戦を、自身初の首位タイで折り返した。
大勢の報道陣に囲まれた竹谷の姿を見つけて、谷口が釘を刺す。「今からあまりおっきなことは言うなよ。言うのは勝ってからや」との忠告も、心配ご無用。
ゴルフ専門学校で、マナーもルールもみっちりと勉強してきた。礼儀正しく丁寧な言葉使いには、謙虚さにも満ちていて「今日は今日で上出来ですが、大事なのは明日、明後日。明日からまた、自分らしいゴルフを続けるだけです」。優勝、とか勝つとかいう言葉は一切なかったが、34歳の秘めた思いは相当熱い。