記事

ファイナルQT22位! 山岡成稔は22歳のルーキー

このオフの“最終回”にあたる今年3回目の宮崎合宿「JGTOゴルフ強化セミナーin宮崎フェニックス・シーガイア・リゾート〜オリンピックを目指して〜」。参加24人の中でも、すらりと183センチの長身で、目立っていた。山岡成稔(やまおかなるとし)。昨年12月のファイナルQTでランク22位につけて、今季前半期の出場権を獲得した。22歳。期待の新人である。

今回は2月16日から始まったこの強化合宿を前に、実はちょっぴり自信があった。「僕は多分、筋肉痛にはならないだろう」。日大出身。卒業後も恒例の合宿に参加して、学生時大から走り込みも、筋トレも「それも、けっこうキツいやつ」をこなしてきて、ここ宮崎でも今さら、という思いがあったのだ。

「それが、初日から・・・」と、苦笑した。初日から、熱血指導の廣戸聡一先生の「フォースタンス理論」もなんとなく噂では知っていて、それでも「半信半疑」。それほどのものとも思わずやってきたのだが、さっそく初日から、山岡はその効果に驚かされることになる。

まず、他の選手の例にたがわず、いきなり筋肉痛に見舞われた。悲鳴を上げながら目覚めた2日目の朝。「起きたら、膝とか、腕とかにも来ていて。明らかに痛いんですよ」。痛いんだけど、筋肉痛なんだけど、2日目の練習場での打撃練習も、午後からフェニックス・シーガイア・リゾートにあるトム・ワトソンコースでのラウンド実習でも「なぜか問題なくクラブが振れる」。

マジックみたいと山岡は言った。「これまで取り組んできたトレーニングや筋トレも悪くはないんですよ。ただ、今までのは次の日に、スイングが出来なかったり・・・」。
しかし、体の特性に合わせて編み出された廣戸先生のメニューは「ショットにまったく影響しない。それで、あっ・・・これはほんとうに凄いのかなって」。

17日の火曜日には、特別講師で駆けつけた中嶋常幸が「今まで見て来た中で、一番良いトレーニング」と言ったが、山岡も「僕なんかが中嶋さんと一緒になって言うのは本当に失礼なんですけど」。レジェンドに無礼も承知で山岡も言いたい。「僕も、中嶋さんの言葉に凄く頷けた」という。

ウッズに憧れた父親が、「うちの子も、あんな選手に出来ないものか」と本人には当然、記憶もない3歳のころから握らされたクラブを振り回して、昨年の関東アマでは3位に。地元徳島県の私立高校時代には、緑の甲子園とも呼ばれる「全国ゴルフ高校選手権」で8人のプレーオフに臨んで“全国制覇”の一歩手前で行った。

プロの試合は2度挑戦。まず最初に高校時代に出たミズノオープンでは「出られただけで幸せを感じちゃうような・・・。気持ちの持ち方もプロと全然違う。歯が立たない。本当に凄い世界」と、ただただ気後れだけで、終わってしまった。
しかし間もなくプロとしてのツアーデビューを控えて後輩として、普段の礼節は守っても、いざ試合では「どんな年上のプロでも、同じ職場で戦うライバルと思ってやる」と、決めているのは苦い記憶があるから。
これまた、まだアマチュアとして挑戦した昨年のQTセカンド。「あそこで失敗したから。同じ組のプロに気を遣いすぎて初日に打っちゃったから。これからは、気持ちだけは強く持ってやろうと思う」と、いよいよ迫る開幕を前に、心構えも万全だ。

この強化合宿に参加したことで、確信も出来た。「自分がこれまでやってきたことは、間違っていなかったと思えた」。合宿主催のJGTOの理事で、ツアー通算16勝の鈴木規夫に初日に聞かれたそうだ。「お前は何タイプや」。人間の体の動かし方には4つのタイプがあるとする「フォースタンス理論」。
廣戸先生の診断で判明した自分の型を鈴木に伝えると、「それならハンドダウンやな、と。また青木さんと一緒やとも言ってくださって」。これまでにも自分でいろいろ試行錯誤で取り組んできて、「理論は全然知らなくても、いまたどり着いた自分の形を、鈴木さんがちゃんと言い当てられたことで、ああ間違っていなかったんだと。寄り道もしてきたけど、これで良かったんだと再認識出来たことは大きかった」と、喜びを隠さない。

3日目の18日は、フェニックスカントリークラブでの9ホールのラウンド実習では、高校時代に一度だけ回ったきりの難コースで1オーバーで回って来られたことも、手応えになるなど山岡にとっても良いこと尽くしの宮崎での日々。
素直に感動しきりの毎日だが、「でも完全鵜呑みはしませんよ」と、頑固な一面も。「理論を知って、自分に合った部分を取り入れることは大事だし、この合宿が終わったら1冊くらいは本も読んでみようとは思いますけど知識を入れすぎて、頭でっかちになるのも僕は嫌。今までの感覚も大事にしたい」という。

「ツアーに出られただけで幸せ」と、有頂天になっていたアマチュア時代とは、もう違うのだ。「プロになったからには、今まで自分でやってきたことにもプライドを持つべきで、すべて他人の意見が正しいとは思いたくない」と、反骨心も忘れない。
「何かひとつきっかけを掴めれば、一気に上り詰めることも可能なのがプロの世界」と勇ましく、「経験を積んで徐々にというより僕は、今年一気に優勝しちゃえくらいで挑みたい」。ツアーには、ルーキーにも平等に、でっかいチャンスが落ちている。

関連記事