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ショットも心もまっすぐに・・・!! 稲森佑貴が初受賞

初優勝こそ届かなかったが、賞金ランクは自己最高の29位につけて、初の“第一シード”入りを果たした今年は、シーズン最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」にも、滑り込みの出場を果たした。

選ばれし精鋭のみが集う舞台で、今季のクライマックスも無事戦い終えると翌日の7日月曜日には、各部門別ランキング1位をたたえる「ジャパンゴルフツアー表彰式」で、プロ入り5年目の初登壇も嬉しかった。

パー3を除く、ティショットがフェアウェイをとらえた率を示すフェアウェイキープ率で、69.61%を記録した。21歳の若さで光るその安定感こそが、稲森のセールスポイントでもある。

ティーインググラウンドに立ったときに稲森がすることは、まず最適の立ち位置を見極めること。
ピンポジションから逆算して、ホール全体のレイアウトをざっと掴んで、「ティの真後ろに立って、片目をつぶり、利き目で見て、今日は右目のほうがいいのか、左目か。どちらがフェアウェイを捉えやすいか」。

アドレス位置を決めて構えたら、「次は、狙い目を点で定める」。
「あのあたりとか、漠然とではなく、僕の場合はあの木の出っ張ったあそこの枝に向かって、とか。わかりやすく言えば、ある一点を銃で狙うイメージです」。

ターゲットのロックオンが完了したら、あとは無心で振り切るだけだ。
「余計なことはぐちゃぐちゃと考えないほうがいい。ただ、そこだけを見て打つ感じ。思い切り振り切ることが大事ですね」。

マイナビABCチャンピオンシップでの2位タイを含む、今年5度のトップ10入りは、そんな持ち味を最大限に生かした1年となった。

「男子ツアーはこんなにも、つわもの揃いの中で、何か一つでも一番上にいられたということには、ものすごく達成感がある」。
プレースタイル同様に脇目もふらず、重ねてきた努力がまたひとつ報われた。
一般社団法人日本ゴルフツアー機構から記念のトロフィーと、PGAホールディングス株式会社の田中耕太郎・代表取締役社長より賞金30万円を贈られて、感動を噛みしめた。

レッスンプロの父親が経営する練習場で、物心つかないうちからゴルフクラブを遊び道具に育った。幼いうちからプロ入りを意識して中学を出たら、ツアーの出場優先順位を決める予選会のQTに挑戦しようと決めていた。

高校2年の2011年に、みごと一発通過を果たすと父親の運転するキャンピングカーで、全国津々浦々の親子旅ガラス。
キャディとしても支えてくれた。父にまずひとつ報いたのは昨年。賞金ランク75位は第二シードの枠ながら、二十歳での初シードを実現させた。
地元鹿児島から上京して、初の渋谷に度肝を抜いたのも、ちょうど昨年の今頃だった。あのときは、ただ輝かしい受賞者を仰ぎ見るだけだったこのジャパンゴルフツアー表彰式で、今年は確かな成長の跡を示して見せた。

昨オフは、JGTO主催の宮崎合宿に参加。そのあと自主キャンプは、あえて断崖絶壁や、強風のコースを選んで厳しい環境で、腕を磨いた。まだ若いが、我が道を行くゴルフ一途の努力が年々、確実に実を結んでいる。

来季に向けて、磨きたいのはグリーン上での積極性だ。今季は、他にパーオン率で3位と、確実にフェアウェイを捉え、好条件からがっちりグリーンを捉えても、「グリーン上でもう少し、攻める気持ちがあればもっと良かった。初優勝にも近づけていたかもしれない。今年は何試合かで勝てそうで勝てなかったのも、グリーン上で消極的になってしまったから。これからはそういう場面でもいかに冷静かつ、攻めていけるか。そこが大きなポイントになってくると考えている」。

来季もお父さんとの親子鷹。「また何試合かで担いでくれると思うので。父だけではなく、幼いころから応援してくださる方々への恩返しのためにも、来年こそぜひ初優勝を狙っていきたい」。
球も純真無垢な心も相変わらずまっすぐに、2016年こそ地元に錦を飾る。

  • 宮崎合宿の“総監督”でもある鈴木規夫から受けたトロフィー。初の登壇!
  • 来年も、お父さんとのキャンピングカー生活?! 田中社長よりいただいた賞金30万円も、来季の転戦資金に!!

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