顕著に出たのがシーズン最終戦だった。
「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の東京よみうりは狙いどころが狭い上に、グリーンに起伏があり、少しのミスが大けがになる。
3日目の17番では、3打目のアプローチも乗らずに4オン3パット。パー5でダブルボギーを喫した上に、最後屈指の18番パー3もボギーで意気消沈。
「全部が上手く行かない。絶不調です」と、顔色も悪かった。
今季は、クラブセッティングやショットを変えてみたりしたのも引き金になったのか。
「今年はちょっと脱線しているなという気がしていた」と、自覚していた中で8、9月には4試合連続の予選敗退も喫していた。
「いまだに答えがわからない状況です」と、最後まで改善策が見当たらずに終わっても、フェアウェイキープ率は依然として不動の9季連続1位を獲得した上に、記録数値は史上初の80%越え(80.957)。
「謎です」と、苦笑した。
「フェアウェイキープはいいから今年は飛距離が欲しい」と、考えていた時期もあったそうだ。
それでもなお絶対王者の称号はついてきた。
今年も1位を獲りました終盤戦ではあまりの不振に「それはもういいです」と、自暴自棄になりかけた日もあったがその時点ですでに、脅威の80%越えも決定していた。
もはや切っても切り離せない。
というか、切ろうとしても離れない。
「80パーセントだけど、心の中では一番芯くっていないシーズンです」と、本人ですら首をかしげるほどの曲げないぶりはついに、“神域”に到達しつつあるようだ。
今月2日に都内で行われた部門別表彰式で「またおまえか~みたいになってません…?」と、周囲の反応を気にしたが、この先、稲森を凌駕してくる選手がそうそう出てくるとも考えられない。
来年は、ついに10季連続フェアウェイキープ1位の偉業がかかる。
8季連続を記録したあたりから、「10回続けて獲ったら“稲森賞”にしてもらえないか…」と、冗談交じりに話してきた夢も現実味を帯びてきた。
実現したら、JGTO初代会長の故・島田幸作氏の名前を冠した部門別表彰「最優秀新人賞 島田トロフィー」に次ぐ栄誉だ。
表彰式会場の舞台袖でも、宮里優作(みやざと・ゆうさく)や、堀川未来夢(ほりかわ・みくむ)ら選手会の理事会メンバーともその話題になったそうだ。
今年は、未勝利での受賞となったが、「来年は、メジャーで勝ちたい」と、思いも新た。
「フェアウェイキープもとにかく10年は頑張りたいな、という思いがありますので」。
節目の年に、18、20年の「日本オープン」に続く3度目(通算勝利数なら6勝目)の“日本タイトル”でさらに箔をつける計画だ。