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日本オープンゴルフ選手権競技 2018
シード権の確保にあえぐ49歳が日本一の舞台で4年ぶりの首位に
藤田寛之が、今季自己ベストの64で、4年ぶりの首位に立った。4番で、バンカーから寄せた1.2メートルを皮切りに、怒濤のバーディラッシュが来た。
3つめの6番では手前花道から直接、放り込むなど前半最後の9番まで、実に6連続バーディは2014年のANAオープン3日目以来。
「最近では連続というものも、ほとんどなかったので。自分でもちょっとびっくり」。
テレビ解説をつとめた師匠を捕まえ「弟子入りしたころのように、かなりしつこく聞いた」。8位タイは、約1年ぶりのトップ10入りを果たした、2週前のトップ杯東海クラシックのことである。その練習日に芹澤信雄と、とことん取り組んだショットの修正。「今年は、左に大きくフックしてしまうようなミスが多かったが、それがかなり減ってきたという手応えは感じている」。
パット練習も、以前のドリルに戻して「前にメジャーに行ってたころに、パーネビックがやっていた。ティーを2本刺してそのゲートを通過させる。目線や打ち出したい方向に打ち出せるやり方。それとショットがリンクした」とここに来て、今年の悩みが一気に晴れつつある証しがこの日、初日の好発進と思うが本人は「最近の自分の調子で出るようなスコアでなない。まさか想像もしていなかった」と半信半疑だった。
前半のハーフ29も「10何年ぶりくらい」。実際は、2012年以来6年ぶりだが本人には、もっと長い時間に感じる。
「スコア的には120点。でも、絶対無くしていかなければならないようなミスがまだ出ている。常に、5,6メートルについて、というゴルフなら内容的にもと言えるが」。
自信回復にはまだほど遠い。
日本と名のつくタイトルは「僕は(日本)シリーズ(JTカップ)だけ。日本プロや、オープンはない」。
ビッグタイトルへの欲は、2012年に賞金王に輝いたころがピークだったが「今は、俺、来年もこの大会に出られるの、と。そっちのほうが、非常に最近の自分の不安要素でした」。
先日も、関係者から聞かれた。
「来年は、シニアツアーに出場するか、と」。
50歳を目前に控えて「幸運にも僕は、来年からそちらにも出れるし、そちらに行くのもいいかなあと思っている」とそんな心境にも陥っているのは今季、今この時期にもまだ獲得賞金が1000万円にも到達していないから。
遠く圏外にいて「リアルにシードの心配をするのも、今年が初めて。ここ数年はシリーズに出られるかどうかだったけど、今年はそれさえとんでもない」。歳をひとつ取るたびに年々、ハードルは上がって「日本タイトルとか、優勝とか、ベスト3とかその前に、自分がやるべきことが他にある。その前に、一歩一歩と感じている」。
諦めてしまいそうな今日この頃を、先輩の快挙を手本に懸命に食い止める。
5月の日本プロで、大会最年長Vを記録した谷口徹。
「若いころと違って、刺激しあうというのも今はおこがましい。ベテランこそのつらさ。谷口さんの苦悩も知っているので。くじけそうな気持ちの中で、そういったタイトルを獲る凄さ。同業者として分かるので。凄い先輩だと。あまりにも凄すぎて。素晴らしい勝ち方を見せてもらって勇気をもらった。俺も頑張ってるからお前も頑張れと言われた気がした」。
真摯に受け止め糧にする。
「レギュラーでまだまだやれると言ってくださる皆さんにももう1回、優勝トロフィをお見せできるような活躍がしたい気持ちはあります」。
さまざまな葛藤にまみれながら49歳が挑む、日本一のタイトルである。
この日は、4アンダーを出した谷口は、藤田の首位獲りを受けて、こうコメントした。
「試合に出れば、チャンスはある。誰にでも。人生、分からない」。