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日本ゴルフツアー選手権 Citibank Cup Shishido Hills 2011
小林正則が首位キープ
「盆と正月が一緒に来た」とも。
落としどころの狭いフェアウェイは、深いラフに囲われてとてつもなくプレッシャーがかかる。待ち受けるグリーンはスピードがあり、複雑な傾斜を持つ。
恵まれた体格に、飛距離が出る分リスクも高く、「小林にはここ宍戸はもっとも向かないコースでは」というのが多くの見方だ。
実際に、気さくなあんちゃんといった風情が漂う本人にも直接、「いったい何が起きたの?」と冗談交じりにぶしつけな言葉をかける知人や関係者も多く、そのたびに人の良い笑顔を浮かべて冒頭のようなセリフで答えている。
遠慮のない言葉にも、気分を害するような気配も見せず「ホントに自分でも一体どうなっちゃったのかと」。
「もう、いっそこのまま勝っちゃえよ」などと他の選手から言われても、ブンブンと首を横に振り、「あり得ない。僕の場合はこのあとまだ一悶着も、ふた悶着もあるから」と言って、あいかわらずへらへらと笑っている。
この難コースで2日連続の60台に、その一番の要因を聞かれて真顔で答える。
「運がいいんでしょう」。
コース攻略の鍵についても「ただ一生懸命にやっているだけ。常におっかなびっくりだけど、あそこに打つと決めたら余計なことは考えず、思い切って打っていくだけ。良い意味で開き直っている」とどこまでも、行き当たりばったりの無策を強調する。
2日連続でテレビカメラの前に呼ばれた中継局はNHKのインタビュー。「モザイクかけて」と、言ってスタッフを笑わせる。意外とシャイな性格も、しかしぜひ、全国放送で流して欲しかったのが、この日は570ヤードの15番パー5だ。
「ティショット、セカンドともに完璧に打てた」と、残り240ヤードから、3番アイアンで左2メートルに乗せたこのイーグルだけは、ぜひ全国のゴルフファンにも見て欲しかった。
「ちゃんと、撮ってくれましたか?」とわざわざ2度も念押ししたほどだ。
昨年のチャレンジトーナメントは賞金ランク3位で前半戦の出場権を手に入れた今季。
2週前のとおとうみ浜松オープンで、ツアー初優勝を挙げたことで、常に頭によぎっていたリランキングやシード権の確保のことを、考えなくて済むようになったことは、大きい。
「落ち着いて、コースに向き合うことが出来るようになったから」。
そう言ったときの表情には、周囲の目を気にしてひた隠しにしている確かな自信が、ちょっぴりはみ出していた。