そして小林は「手嶋多一の見えない力」と、冗談めかして首位と3差の6位で週末へ。
2002年の初シードをわずか2年で離してから2011年の「とおとうみ浜松オープン」で、石川遼をプレーオフで下して初Vを飾るまでに9年を要したが、2012年の「パナソニックオープン」と、2013年の「日本オープン」で立て続けに3勝。
勢いづいたと思ったら、その後また長いトンネルに潜りこみ、昨年のABEMAツアー「ISPS HANDAヒーローになれ!」で、最終日の中止による突如の復活Vまで再び9年かかった。
同ツアーの賞金ランク6位で出場資格を取り戻した今年も、「パッティングで悩んでいて、それにつられてショットもおかしくなっていた」と、10戦中8戦で予選落ちを続けた矢先のV争いだ。
ブランクの長さと落差の激しさは、本人にも自覚があり「僕は今日だけですよ」と苦笑いで達観するが、先週2週の夏休みの北海道キャンプで「ショット8:2パット」の練習配分を見直し、パット練習に従事。
アドレスの傾斜を深くし、パターもピンタイプから、ネオマレットにチェンジしたことでヘッドアップが止み、この日は2~3メートルのチャンスを逃さず、最後18番でも「今までのオレなら入らなかった1メートル半を入れられた」と、成果を実感することができた。
出口の見えない低迷に耐えるコツは「やけ酒、破れ酒。オレは酒で忘れられる」と、笑う。
「昔は落ち込んだりもしたけど、この歳でゴルフやらせてもらっているだけありがたいし、応援してくれる人もいる」と、前を向く。
47歳。シニア入りまで3年を切ったが、「シニアツアーも甘くない。50歳になるまで死にものぐるいでやったほうがいい」と、手嶋や、先週シニアで初優勝を飾った宮本勝昌から言われた言葉を胸に「ダメだったらQT。QTもダメならアジアンツアーもある。辛いし、おっくうだけど、その気持ちがなくなったら老け込んじゃう。ぼろぼろになるまでとは言わないけどやらせてもらえるんだったらやりたい」と、ムチを打つ。
若手の台頭と、昨今のレベルアップは脅威でしかない。
「とてもじゃないけど、相手を意識する余裕はない。コースと、自分との勝負だと思っている。明日も、あさっても60台で回ってそれで結果がついてくれれば」。
9年311日ぶりのレギュラー4勝目なら、史上5番目のブランク優勝となるが、「大丈夫、明日は手嶋多一に吸収されるから!」。
最後に必ずオチをつけるのもベテランならではだ。