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全英オープン3日目

市原弘大には、トゥルーンで初めて過ごすメジャーの週末が始まった。3日目の最終ホールは右から6メートルのバーディ締めは、約8000人で埋まる巨大なギャラリースタンドから降り注ぐ歓声が心地よかった。

「ここでプレー出来ることが、幸せだな、と」。感泣の予選通過を果たした34歳は、3日目も挑戦者になりきった。
「今日もピン位置を考えて、攻めていってもいいかな、と」。

そのことによって、確かに大怪我はした。
風が吹かない日がないリンクスコースはこの日10番でダボ、11番ではダブルパーの「8」を打って「洗礼を浴びたような感じで。やはり、要所要所は締めていかないと。そういうところで少しずつ、差が出てしまっている」。
反省を口にしながら、市原はどこか楽しげだった。

「この舞台に立てるということが、気持ち良かった」と改めて、初の決勝ラウンド進出の喜びを、最後まで噛みしめていたい。「この風にも慣れてきた。今日は初日、2日目の緊張感もなかった。攻める気持ちは明日も変わらずやりたい。その中で、どれだけやれるか」。
最後まで、挑戦者を貫く。

五輪の日本代表の一人はこの日はカップに嫌われた。池田勇太は5番で、3パットのダブルボギーを打った。「最初のパットはラインの読み違い、返しも入ったと思ったがカップの手前できゅんと切れた感じ。今日は、パットだけだった」とショットが良かった分、余計に悔しい。

「もう少し入っていれば波に乗れるが、ずっと外し続けているので波が来ない」と、通算7オーバーまで順位を落として「最終日は一つでも取り返して、上を目指すだけ」と、せめて最後に一矢報いる。

そして賞金王は、世界4位との同組ラウンドを楽しんでいた。「ローリーとは初めて一緒に回ったので」とは金庚泰 (キム キョンテ)。

ロリ−・マキロイの攻めのゴルフだ。
「彼は今日はあまり調子は良くなかったけれど、グリーン周りとか、バンカーとか。それに、悪くてもこの人は凄く狙っていくから」。自分はどちらかというと、飛ばすというよりパットでスコアを作る、現在世界3位のスピースのゴルフに共感するものがあるが、それでも常にドライバーで前をにらむ果敢な若武者のゴルフには、胸がすく思いだった。

大ギャラリーを引き連れてなお、終始互角の戦いも、賞金王には最後の最後が痛かった。「グリーン奥にOBがあるのを知らなかった。僕のチェックミス」と3番か、4番アイアンか迷った末に、前の17番を参考に18番の2打目で3番を握ったことを、後悔した。
ティショットを打ったときにはあれだけ感じていた風も、グリーン周りは巨大なギャラリースタンドに遮られて、さほどでもなかったことも後から知った。

「3オーバーのままで終われていたら、良かったのだけれど」。一時期、崩していたショットが回復傾向にあるだけに、3日目は最終ホールのトリプルボギーが残念だ。

5度目の全英オープンは、トゥルーンに来たときからひそかに思っていた。「距離もあまりないし、前半はチャンスも多い。僕に合っている」。相性の良さを思えばなおさら「最終日もう1回、アンダーパーで回れれば」。
賞金王の底力を見せたい。

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