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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2020

岩田寛は「記憶にない」5年ぶりの最終日最終組へ

不安?不安じゃない?明日はどっちに曲がる?©JGTOimages
岩田寛が最終日を単独首位で迎えるのは、実に12年ぶりだ。
「自分でも驚いてます」と、正直に言った。
「記憶にない」と、首をかしげた。それほど久しいことだった。

1差の3位で出た3日目は、降りやまない雨に、凍える寒さ。
前半の2ボギーで、通算5アンダーまでスコアを落とした。
後半にいくほど気温が下がり「ずっと球が飛ばなくて、ずっと我慢と思ってました」。

だが、折り返しのスコアボードでひそかに目を剥く。
なんと、首位と5打差がついていた。
しかも「上の5、6人はみんな赤字(アンダーパー)。みんなどうやって回っているんだろう、と」。

そこから、岩田なりに気合を入れた。
「落とさないように」と心に決めて、12番でこの日の初バーディ。5メートルを沈めた。
17番のパー5は、25ヤードのアプローチが1メートルに寄った。
後半9ホールをボギーなしの2アンダーでまとめた。
スタートの通算7アンダーに戻して上がってみれば首位だった。

最終日最終組は、5年ぶり。だが、「5年前なので、どんな感じになるか今は分からない。不安です」と、言った。

5年ぶりのツアー通算3勝目のチャンスも「この5年の間にいろいろあったので。明日はどうなるかわからない」とつぶやいた。

15年の「長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ」でツアー2勝を飾った。同年の「全米プロ」では2日目にメジャータイ記録(当時)の63で回り、秋の“入れ替え戦”で米ツアーの出場権を手にした。
16年は「AT&Tペブルビーチナショナルプロアマ」で最終日最終組を回って4位もシード権に届かなかったどころか「ボロボロになって帰ってきて。そこからなかなか調子が上がらなかったり、練習しても練習しても、上手く行かない日々が続いていた」。
その間に、V感触もすっかり消えて「ポジティブなことは思い浮かばない」と、考え込む表情。

「今は不安でも、当日になったら消えていることもある。ずっと不安のまま、いいスコアで回る時もありますし、自信があるのに全然いいスコアが出ない時もある。今はまだ、分からない
…」と、またまたヒロシの禅問答。

ただ一つ、明快に言ったのは、天気が回復する予報の最終日は「伸ばし合いだと、パターが入らないとダメ」。
夜に向かってどんどん冷え込む居残りグリーンで、何度も何度も転がした。いったん、ひき上げかけて、再び戻ってまた、何度も何度も転がした。
言葉は少なくても、その背中に5年ぶりの最終日最終組への意気込みをにじませた。

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