記事

マイナビABCチャンピオンシップゴルフトーナメント 2019

ストレス発散はゴルフ。岩田寛の禅問答

4年ぶりのツアー通算3勝目を狙うプロ16年目の38歳、岩田寛が2日目も首位を守った。

自他ともに認める”短気”で、「ミスすると、すぐにイライラしてしまう」。見かねたギャラリーから、プレー後に本を贈られたこともある。タイトルは「前へ」。明大ラグビー部の名物監督が著した単行本は今も大事に家にあるが「今週は今日も、昨日もまだそんなにイライラすることなく、フラットな感じで出来ている」。
65を出した前日よりも、パットが入らなかったというが、16番では10メートルものバーディが決まった。
4バーディ、1ボギーの「69」は「ぼちぼちですね」。
静かに言った。

プロ11年目の14年にフジサンケイクラシックでツアー初優勝を飾ると、同年11月の世界ゴルフ選手権「HSBCチャンピオンズ」で1差3位に。憧れの米ツアー進出のきっかけを作り、15−16シーズンを戦ったが、シード入りには失敗。

17年からまた日本で戦うが、「今すぐにでも、戻りたい」。
復帰への思いを募らす最高峰の舞台は先週、千葉で初の日本開催が行われ、大学の後輩の松山英樹が、最後までウッズの82勝をおびやかした。
「勝って欲しかった」。
地元仙台で、テレビを通じて松山に声援を贈りながら「サトシとヨウスケと、リクヤとシュウゴと。ほかに、日本勢は……」。石川遼や香妻、大槻智春、堀川未来夢も。「もうちょっと上でやってほしかった」。
自分がそこにいないことも合わせて、忸怩たる思いを味わった。

4年前に米ツアーから持ち帰ったショットの不振をまだ引きずっている。
「気持ち悪さはずっとある。基本的にずっと気持ち悪いので。気持ち悪くないときが今までないので。気持ち悪くないと、逆に気持ちが悪い」と、またいつものヒロシの禅問答。

自分の中に絶対に譲れない理想のスイングがあって、妥協ができない。
「それができないと、気持ち悪さが解消されることはない」。
呑むと楽しい酒と評判だが「僕がうるさくなるからみんなが呑ませるだけで、美味しいと思ったことはない」。
酒はストレス発散にはならない。
「発散できるのは、ゴルフだけ」。
先週の空き週も、復調に少しでもつながればと、苦手なランニングに黙々と励んだ。
常に武骨なまでにストイック。
首位タイで迎えるヒロシの週末。
「決勝ラウンドに向けて…?」。
いつものように、しばらく口を一文字に結んで沈黙を作ってから「明日も、フラットにやっていきたいんですけど…。明日、考えます。ひとつひとつやるしかない」。
究極のストレス発散は、優勝しかない。

関連記事