選手たちがリレー方式で、ゴルフの楽しさ、面白さを全国の小学生たちに伝えて歩く伝統の貢献活動で、2023年最初の旅人をつとめたのは今季初シードの田村光正(たむら・みつまさ)。
1月26日に、地元兵庫県の三木市立自由が丘小学校を訪ねた。
31歳、二児のパパ。
もうすぐ2歳になる長男と、昨夏には長女も授かり「急に父性が芽生えた」と、近頃では他人のお子さんにも我が子の未来を重ねてジン…、と胸を熱くする。
ちょうど前日には記録的寒波の襲来があり、実施も危ぶまれたが「ファイター・ミツ」の異名を持つ男の情熱は、積雪をも溶かしてこの日は快晴!
初対面時はちょっぴりよそゆきの空気もすぐにアツアツ。
「みんなを喜ばせたい」との一心が、子どもたちの心もあっという間に溶かした。
3,4時限目の講習会時に使った初心者用具のスナッグゴルフは田村も初体験だった。
「けっこうムズい…」と、終盤のガチンコ対決は、プロがトホホの惨敗だったが子どもたちの目の色が、みるみる変わったのは嬉しい。
「僕は父親の指導で小3からゴルフを始めましたが、なかなか楽しさが分からなかった。あのときスナッグゴルフに出会えていたら、僕ももっと早くゴルフが好きになれていたと思います」と、確信。当地の恵まれた環境を羨んだ。
西日本最多という25のゴルフコースを擁する三木市では2020年に「ゴルフのまち推進課」を設立。
この日の講習会も、大西課長と事務局員の竹谷さん、中尾さんらがお手伝いに来てくださるなど、市を上げて盛り上げに熱心だ。
また、ゴルフ歴5年という中上智貴・先生は「一生に一度は生の松山選手を見ておきたい」と、千葉で行われた昨年10月の日米「ZOZOチャンピオンシップ」に遠征。自腹で“視察”されたほど。
田村がその松山と大学同期と知って、この日の来校も本当に楽しみにされていたそうだが、受け持ちの6年1組があいにく学級閉鎖に。
子どもたちとスナッグゴルフができなかったのは残念だったが、午後から「夢を持とう」と題した田村の講演会は、各自宅と講演会場の6年2組の教室をタブレットでつなぐリモート形式で、全員参加が実現した。
黒板に、年代順に綴っていった人生年表の中で、この日一番大きな拍手が起こったのは「9才ー同じクラスに可愛い女の子が転校してくる」と「27才ー結婚」を、田村がチョークでつないだ瞬間。
「一度フラれましたけどずっと好きで、必ずこの子と結婚すると確信していました」と、あとで照れ笑いで明かしたが、講話で一番伝えたかったのはもちろん、奥さまとの感動のなれそめではなく、昨季賞金ランキング55位で初シード入りを果たした際に、改めて痛感したマイ・格言。
「努力は報わせる」
ほとんどが、エスカレーターで大学進学する兵庫県西宮の関西学院高校から、プロを目指してあえて強豪の宮城・仙台の東北福祉大に進んだが、アマ選抜のナショナルチームでは自身の実力不足に愕然。
一度はプロを断念した。
卒業後は一般メーカーに就職したものの、1年で離職。
やっぱり夢を追うと決め、紆余曲折の末にたどり着いた新境地だ。
「努力は報われる…って、よく言いますけど、それでは弱いんとちがうかなって。なんとしてでも報わせる、という強い気持ちが凄く大事と思っています」などと力説。
卒業を間近に控えた6年生たちの関心を強く引いた。
年表の最後の「未来」のところには「日本ツアーの賞金王」と記した。
「いま、僕の一番の目標です」と、子どもたちの前で夢宣言。
今季、初シードを果たした12人の中では最年長にあたる。
31歳が、若手の台頭をかき分け大望を追う。