数年前から球の行方がかすむようになり、昨年から乱視用のメガネを装着している。
「見えないから、ボールも黄色にして。いろいろやってきたけれど」。
ついに孔明の万策も尽きた。
「何をやっても上手くいかなかった」と、吐きだした。
昨季まで、15シーズンは、継続中としては片山晋呉の25シーズンに次ぐ2番目の長さ。
その片山も、今年で記録が途切れた。
「いずれ、切れるものだから」と、気丈に言った声に悔しさがにじむ。
小田孔明(おだ・こうめい)が、2007年から守ってきた賞金シードを失った。 最新の賞金ランキング
2009年の本大会で連覇を達成するなどツアーは通算8勝。
得意コースのはずだが、「だからといって、今年のゴルフがいきなり良くなるとは思えない」。
初日の「73」に続いてこの日は4オーバーの「76」を叩いた。
通算5オーバーは決勝進出に、6打も足りない96位タイで予選敗退。
7番ホールのロープ際で、「上位を狙ってください!」と、応援されたが条件反射で首を横振り。「頑張ります」と、元気に返事できない自分がもどかしい。
「昨日から、同伴選手に迷惑をかけないようにとそればっかり」。
2014年に賞金王を獲った。
「自分が強い時に、こういうプレーをされたら嫌だな・・・というゴルフをいま、自分がしていると思う。賞金シードのレベルに到達していない」。
不振の一番の要因は、2013年にV経験もある9月の「ANAオープン」で、1日34ホールを回ることになった順延の3日目の26ホール目に、両足の痛みで全身がつり、歩行困難で棄権をしたこと。
「今まであんまり棄権をしたことがない」という偉丈夫の途中放棄に、深刻さが伺える。
その後も回復に時間がかかり、そこから予選通過は「三井住友VISA太平洋マスターズ」(62位タイ)だけと“惨敗”。
獲得賞金は500万円にも満たず、大会前の賞金ランキングはボーダー線の67位にもほど遠い101位。
「戦える状態ではない、ということ」。
結果に納得してしまう自分もまた口惜しい。
次週のQTを受験しなおしても、現状では好結果は見込めない。
「権利があるなら、1回使ってみよう」と来季は、生涯獲得賞金25位内の資格を行使し、復活を目指すことにした。
「体も心も見直す時」。
トレーニングはもちろん、精神面は同学年で選手会長の谷原秀人(たにはら・ひでと)の鉄のメンタルを見習うつもり。
「この年齢だから仕方ないよじゃなくて。自分ももっとやれる、と諦めない心。谷原が頑張ってくれている。だから自分も」。
昨季から2年を選手副会長として谷原を支え、不調で辛い時でも同名の三国戦士が主人公の人気アニメで流れるダンスをやってみせたりしてくれる気の良い男。
「1年、ありがとうございました」と律儀に頭を下げてコースを出た。
来季、改めてパリピな孔明がまた見たい。
<予選ラウンド終了時点で賞金シード陥落した選手>※( )=本大会時の賞金ランキングと、他の有資格
ジェイブ・クルーガー(19位、2023年優勝による資格有)
片山晋呉(68位、永久シード選手)
小鯛竜也(69位)
ブレンダン・ジョーンズ(89位、生涯獲得賞金25位内)
比嘉一貴(90位、2022年賞金王による資格)
小田孔明(101位、生涯獲得賞金25位内)
大岩龍一(105位)
宮本勝昌(108位、生涯獲得賞金25位内)
久常涼(114位、海外ツアーメンバー資格獲得による資格の継続適用)
田村光正(146位)
小平智(150位、海外ツアーメンバー資格)
チャン・キム(215位、20ー21年賞金王による資格)