賞金ランキング98位で大会を迎えて、通算1オーバーの80位タイで予選敗退。
「高知には応援してくださる方も多い。悪いなりにも頑張ろう、と思っていましたけれど。ここ来て、いきなり良くなるわけがない」。
上位65人の賞金シードに近づくこともできないまま、2シーズンぶり16回目の賞金シード復活は絶たれた。
2000年にプロ転向し、2007年に初シードを果たして本大会の2勝を含む通算8勝。
賞金王に就いた2014年には本大会で、12年に続く2度目の戴冠を狙った藤田寛之(ふじた・ひろゆき)と熾烈なレースも繰り広げた。
「カシオくらい、いいゴルフがしたかったけど」と、ため息に似た声が出た。
昨季、2007年から守った賞金シードを失い、生涯獲得賞金25位内の資格を使って臨んだ今季、開幕前の健康診断で、心臓に深刻な症状があることを告げられた。
「右心房の筋肉が動いていない。そこに血液が通っていない。息切れとかないですか?」と、医師に問われて首をかしげた。
自覚症状は感じていなかったが「夏場など、心臓の負担がかかるときはゴルフをしないほうが良い」と、注意を受けた。
「普段の生活はできる」。
でも、「完治はありません」と、言われて暗澹たる気持ちになった。
「息切れしたらすぐにやめてください」と、言われれば、日課にしていたランニングやトレーニングも控えるしかない。
9月を過ぎても続いた猛暑で、ラウンド中に足に激しい痛みを感じて1試合を棄権をしたのも症状のひとつだったのか。
「無理はできない。早死にはしたくない。気持ちが萎えるというか、ゴルフに集中できない」。
今季19試合に出場し、本大会で12回目の予選敗退。
消沈のプレー後、自身18年ぶりとなるファイナルQT(12月3日ー6日、下関ゴールデンゴルフクラブ ・山口県)に申し込んだが、出場資格が取り戻せたとして、来季以降も体調次第の参戦となるのは目に見えている。
「でも、ゴルフ界にとってはいいこと。若い選手がどんどん出てきているし、オジサンは退散するしかない」と、つとめて明るく言った。
「シード獲ってからのここ10年は、なんか自分の中では抜けたような感じだったから。いつかこういう日がくるとは思っていた」と、現実は受け止めている。
「谷口さんとか、藤田さんとか。頑張っている姿を見て、自分のほうが若いのにな、とか」。
56歳の今なお、レギュラーツアーにこだわる谷口徹や、米シニアツアーへの昇格を果たした藤田の情熱を手本に、自身も3年後に控えたシニアツアーにも、静かに心を傾ける。
日ごろから後進の指導にも熱心で、昨年まで副会長をつとめた選手会では広報担当理事も兼任した。
「スポンサーを集めて試合を増やすとか、これからは裏方にも力を入れて。何か自分ができることで返していけたら」と、今後のツアーとの関わり方にも頭を巡らせ、「1年間、ありがとうございました」。
報道陣に律儀に頭を下げ、なじみの試合を後にした。