壇上では、すぐそのあとのファーストステージで組むペアで、パフォーマンスをするのが恒例になっている。
本番直前の出待ちの袖では、他のメンバーたちがソワソワと打ち合わせを重ねる中で、人知れずリハーサルを完了していた2人は余裕綽々。
「僕らのはストーリーを感じてもらう仕上げになっている」と、石川がメンバーたちに予告していたとおり、キャディに扮した稲森に、クラブを渡された石川がエアショットをキメた瞬間、稲森が「フォア~~~~~!」と大絶叫。(※フォア=Fore・・・打球が曲がり、人に向かって飛んでいったときに発する警告用語)
「僕、言ったの人生初かもしれない・・・」(稲森)。
石川が脚本したという寸劇が改めて、稲森の8季連続フェアウェイキープ1位の偉業にスポットを当てた。ツアー部門別データ一覧 2023
開催前夜に行った決起集会でも、メンバーみんなでその話題になり、「10年獲ったら本当に“稲森賞”にしてもらったら…」などと、石川らが大まじめにJGTOのスタッフに提案していた。
「僕からそれを取ったらなんの取柄もないので」と、本人は謙遜したが、今季トップ10入りは10回。
賞金ランキング8位は、18年(3位)と20-21年(6位)に続く、自身3度目のトップ10入りを果たすなど、曲げないショットにしっかり成績も揃えた。
絶好調のソン・ヨンハン(宋永漢)をプレーオフで破り、3季連続優勝を飾った10月の「ACNチャンピオンシップゴルフトーナメント」では通算5勝目にして勝って初めて、というレアな涙もこぼれた。
曲げない極意は、「ドライバーなんだけど、グリーンに向かって打つイメージです」と、点で狙う高度な技術は日々の努力と鍛錬による。
渡辺研太トレーナーによると、「どんな状況でもぶれない軸、それに耐えうる体。曲げないためにも体力は要る。そのために、稲森さんはものすごくトレーニングをされています」。
冬合宿でも、極寒のカチコチコースでオーバーパーを打ったと悔しがり、ラウンド後に雪が舞う寒風下の練習場で、何時間も特打を重ねる努力家である。
今年は昨季の自身のフェアウェイキープ率77.63%をまたさらに塗り替える脅威の78.660%で戴冠したが、「今年は80%を目指していましたので、一歩届かず悔しい結果。来年こそ・・・」。
まだまだ、まっすぐを極めるつもりの来季、春には美穂夫人が待望の第一子を出産予定で、「その日は絶対に家にいて、立ち会うつもりです」と張り切っており、2024年は日本一曲げないパパとして、偉業にチャレンジするつもりだ。