記事

中日クラウンズ 2006

片山晋呉が5打差の首位に

今週の片山は、数字にまつわるすべてのことが頭にないようだ。3日間を終えて通算18アンダー、192ストロークは一昨年前、今大会で自身が更新した54ホールでのツアー最少ストロークとタイ記録。
「・・・そうだったっけ?」と、片山。
この日9番で、2位の川原に1打差まで詰め寄られた。
だが「ああ・・・1打差になってたの? 知らなかった。僕は人との差を見てゴルフをしないからね」。

どうやら、和合がパー70ということも考えになかったようだ。
一昨年前も最終日に67を出せば、72ホールでの最少ストロークのツアー新記録だった。が、結局72を打って伸び悩んだ。
報道陣に、今度こそ60台を出して勝ちたいかと聞かれて言った。
「ここはえ〜っと、・・・パー70だっけ?」。

ゴルフはスコアを争うゲーム。しかし、いまの片山は数字とか、記録とか、そういったものとは無縁の世界にいるようだ。
宮里優作がこんなことを言った。
「片山さんのショットには、感情がない」。
ミスを怖れて、右に行ったらイヤだとか、左が怖いとか。
「消したくても、そういう気持ちを僕は消すことができない。でも、今のシンゴさんにはそういった感情がいっさいない。機械みたい。思ったとおりに勝手に体が動いている。淡々とやっている」(優作)。

18番グリーンに、派手なたすきをかけて上がってきたこともあった。昨年、話題になったのはハッスルポーズだった。
しかし、今年はそんな奇抜なパフォーマンスをいっさい封印している。

2年連続5回目の挑戦だった今年のマスターズ。予選2日をフィル・ミケルソンとプレーした。彼の振る舞いを間近で見ていて、気がついたことがあった。
それは「本当に良いプレーをしていれば、パフォーマンスは必要ない」ということ。

それよりもやるべきことは、コースで少しでも不安を感じなくて済むように、いかに周到な準備をしておくか。
そして、それでもミスをしてしまったあとにはどう振舞うか、ということ。
「・・・彼の表情、息遣いからすべてを観察して、真似をしている」という。

「まずは真似からですけどね(笑)。2日間、世界一の選手と回って感じるものがあった。差を感じて、それを埋めるためには何をするべきか・・・。そしていつか、ヤツらをやっつけたいと思ったんです」。

この日1日中、ほとんど真一文字に結んだままの口元は、何が起きても動じないという決意の表れ。
「ここ和合では、いかにコースと仲良くできるか・・・。コースの“言葉”を聞けない人間は、ここで勝てない。明日は、和合を抱きしめるくらいの気持ちでやりたい」。
きっぱりとそう語る姿からは、早くも王者のオーラが立ち上っている。

関連記事