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ダイドードリンコ静岡オープン 2002

「運が、向いてきたかな?」室田淳46歳、人生のフォロー風

 2位と2打差で迎えた18番。
 グリーン左のカラーから、「3パットでもいい」と思ったとき、室田は、ようやく、優勝を確信していた。危なげなく、2パットで決めて、逃げ切った。

 実は、昨年の今大会は、このホールで“3パット”をたたき、予選落ちしている。
 ラインは、この日の最終日と同じ、のぼりのスライスライン。しかも距離は、この日より、「3分の1」も短い5メートルのパーパット。
 「あのときは、『ここで2パットであがれば、予選通過できる』と、わかっていたのに、3パット…。1ストローク足りずに、落ちました」
 ごく軽症ではあったが、イップスの、兆候がでていたのだ。
 「特に、のぼりのスライスライン。それを、無理に動かそうとすると、余計にショートしていた」
 その打開策として、予選落ちの翌3週間のオフに、クロスハンドグリップで、練習してみた。
 「右手の感覚をほとんどなくして打てる、とわかった。微妙な距離のパットも、ショートしなくなった」
 オフあけの『つるやオープン』で、3位に入った。
 以後、クロスハンドで通し、昨11月のカシオワールドでは、8年ぶりの優勝を飾ったのだ。

 「昨年のこの大会では、3パットで予選落ち。今年は“3パットでも優勝”ですよ(笑)。やはり、スコアにいちばん、結びつくのはショートゲーム。今日は、ピンチをずいぶんしのいだ。やはり、パットのおかげですね」。

 ハーフターンで、金の首位タイと、ジャンボの追い上げを知ったが、
 「誰か、そういう人もいるんだなあ…」くらいに思いとどめ、極力、意識しないよう、つとめた。
 V争いの緊張感にも、
 「弱気な心に負けないように、自分のベストのショット、ベストのパットをする」そう心がけたら、終始、落ち着いてプレーができたという。

 最終18番では、右林に打ち込んだティショットが木に当たり、クラブが触れる場所まで、転がり出てきた「ラッキー」もあった。
 「僕にも、いよいよ運が向いてきたかな?」
 昨年のカシオワールドから、5戦3勝。
 浜岡名物の強風を制した46歳は、今まさに、人生の“フォロー風”に乗っている。

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