佐々木（写真上）と兼本（写真下）は、ともに通算14アンダーで最終組の宮瀬より一組前にホールアウト。
18番グリーン横のテントで、並んでゲームの行方を見守る2人の前で、宮瀬が下り3メートルのパーパットをカップ右から、ねじこんだ。

佐々木は思わず絶句した。「あんなの・・・！！よく入れたよね」一度は、V争いから転落しながらも、土壇場でプレーオフにこぎつけた執念。宮瀬の粘り勝ちだった。
最終日。復活優勝をかけ猛然と追い上げた佐々木は、15番でついに首位を走る兼本を捕らえてプレーオフへと持ち込んだが、その1ホール目に短いパーパットを外した。すでに宮瀬がパーパットを決めていた。佐々木はわざとさばさばとしたしぐさで、ボールを拾い上げた。「別にしびれていたわけじゃないですよ。まっすぐのラインで打って、それがたまたま引っかかってしまっただけ。しょうがないです」。悔しさを押し隠し「4日間、切羽詰まったゴルフじゃなく、久々に楽しいゴルフができましたから」と、笑顔を作った。
10番までに5バーディで、3打のリードを奪った兼本は「これはいける・・・」一度は“初勝利”を確信した。だが、「残り7ホールで自分のいちばん悪いところが出てしまった」リキみが出て、12、14番でボギー。混戦模様を自ら作ってしまった。
プレーオフ1ホール目も、力が入った。ドライバーかスプーンか。迷った末に握ったドライバーショットは左のフェアウェーバンカーへ。 2打目のバンカーショットもダフってグリーンに届かなかった。初優勝は、スルリと逃げた。
空をあおいで兼本がつぶやく。「これも誰もが通る道・・・」悔しい思いを繰り返して、強くなる。

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• 兼本 貴司