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JCBクラシック仙台 2002
「ケンカもしたことがない、弱い男です」
プレーオフは、嫌いだった。
相手をやっつけて勝敗を決めるマッチプレー形式より、72ホール、コースとの勝負のほうが、自分の性に合っている、と思っていたからだ。
「今まで、サシでケンカもしたことがないし、弱い男なんです(笑)」
だから、1打差2位で迎えた18番も、「2位でいいじゃないか」という思いも、ふとよぎった。
昨年、プレーオフ2試合で、あっけなく敗れた、苦い思い出もあった。
「あんな、つらい思いは二度としなくない…」
一瞬、逃げ腰になりかけた鈴木が、再び闘志を振り絞ったのは、ほかでもない、プレーオフの相手が、普段から敬愛してやまない、中嶋常幸だったからだ。
14番で、中嶋と首位で並んでいることを知ってから、「なんとか、ついていきたい」一心で、強風の中も、耐えてきたのだ。
本戦の18番ホール、奥から下り5メートルのバーディパットも、
「相手が、中嶋さんじゃなかったら、きっと、入っていなかった」と、振り返る。
プレーオフに突入しても、とにかく、「中嶋さんに、失礼のないプレーを」と、全力で、ぶつかった。
「勝ち負けはどっちでもいい。それより、良いプレーを見せたいと思った。あっけない負け方だけは、したくなかったんです」
その2ホールとも、ティショットはフェアウェーど真ん中。
「いま、もっとも強い選手」(鈴木)を退けて、「信じられない!」と、しばらくは、放心状態。
「今日の勝ち方って、ちょっとかっこ良くない? まるで、自分じゃないみたいで…(笑)」
プレーオフは、過去3戦全敗だった鈴木が、ようやく掴んだ“初勝利”で、新たな自分を、発見していた。