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<日本オープン・サイドストーリー>68年という長い年月を継承してきた優勝カップ、秘話

2000年大会、2年連続でカップを手にした尾崎直道。同オープンの連覇は、5人 目(7度目)の快挙だった。写真では、軽々とカップを抱えているように見えるが、 実はかなり重い。ひとしきりカメラの前で笑顔を作ったあと、思わず顔をしかめて 「勘弁してっ!」と悲鳴をあげた直道だった。
台座に歴代優勝者の名前が刻まれた日本オープンの優勝カップは、重さ8キロもある 95パーセントの銀 製品だ。
鳳凰の絵柄はカップの内側からタガネで打ち出した、象眼方式と呼ばれる特殊な技法 で造られているが 、この技法を使える職人は、日本に2〜3人しかいないといわれている。しかも、い ずれの方もご高齢 のため、同じものを造るのは不可能で、工芸品としての価値は1,000万円と評価 されている。
ちなみに、実は現在のカップは“2代目”で、“初代”のカップは、第二次世界大戦 のときに行方不明 になり、現在に到っている。
1927年に第1回の日本オープンが行われたが、その時にはカップはなかった。優勝者 にカップが贈られ るようになったのは、第2回大会からだった。初代カップは日本ゴルフ協会の設立に かかわった大谷光 明氏がデザインされた。大谷氏は西本願寺21代の門主でもあったため、そのデザイン は仏教色の濃い東 洋的なもので、中国周王朝時代の香炉をイメージしたものとなった。
1942年〜49年の間は第二次世界大戦のため日本オープンは開催を中止し、その際に41 年大会の優勝者・ 廷徳春が故郷のピョンヤンにその初代カップを持ち帰って、そのまま行方不明になっ てしまったそうだ 。
現在のカップがチャンピオンの手に渡されるようになったのは1952年の第17回大会か らだった。初めて これを手にしたのは、当時最強といわれた中村寅吉だった。
以来、小針春芳、陳清波、戸田藤一郎、杉原輝雄、杉本英世、橘田規、佐藤精一、河 野高明、島田幸作 、尾崎将司、青木功、中島常幸など、その時代を代表するトッププレーヤーたちの手 を渡ってきた。
今年、この伝統と栄光の優勝カップを手にする者は…!?

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