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日本オープンゴルフ選手権競技 2006
片山晋呉「必ず取る、という気持ちがあれば大丈夫」
そんな自分と、脳裏に焼きついた彼の姿が重なった。
「・・・そういえば、彼もこんなふうにプレーしていたな」。
記憶は今年4月のマスターズまでさかのぼる。
初日のことだ。
同組でまわった片山は一瞬、目を疑った。
「・・・これほどの選手が、緊張している!」。
1番のティグラウンドで、ミケルソンの手が震えていた。
「真剣に、勝ちにきている」ことが、そばで見ていても伝わってきた。
あのときの、彼の気持ちがいま痛いほど分かる。
今週、連覇だけを見つめてここ霞ヶ関にやってきた片山もまた、震えるような緊張感を味わっていた。
もちろん、簡単にいくとは思っていない。
「この大会は、まぐれでは勝てない。でも、そういうことをすべて噛み締めた上で、力を出し切りたい」。
日に日に固く、速くなるグリーン。
シビアなピン位置。
前半の12番で10メートル、4番で7メートルを沈めたが、長いチャンスを決めたときよりもむしろ、難しいパーセーブをしたときのほうが気合が入っていた。
8番で「5歩」のパーパットを決めて小さくガッツポーズ。
17番で、グリーンの傾斜にへばりつくように口を広げる左バンカーヘリのラフに入れた。
クラブを短く持って、足だけバンカーの中。不自然な姿勢でのショットを強いられるばかりか、アドレスを取れば、ボールはラフに埋もれてよく見えない。
まして、見上げるピンはエッジからわずか4ヤード。
グリーン表面は見えない。
「寄らないのが当たり前」。
そんな状況で見習ったのは、やはりミケルソンら世界ランカーたちだった。
「ウッズもそうだけど、彼らは大変な状況ほど時間をかけない。きっと、どうなってもしょうがない、と思って、何も考えずに打つんでしょう。だから、僕も何も考えないでとりあえず打とう、と」。
構えるなり、あっさりと振り下ろしたアプローチは、ピンそばにピタリとついた。
ピンチを切り抜けた。
いよいよ、勝負は残り2日。
「厳しい展開は、この先まだまだあると思う」と、苦しい戦いは覚悟の上だ。
「・・・でも、最初から言っているように今週はコースとの戦い。ガッついてもダメ。とにかく、コースに好かれるようなプレーをして・・・。あとは『必ずオープンを取る』という気持ちがあれば大丈夫」。
史上6人目の快挙達成へ・・・。カウントダウンが始まった。
記者会見の模様はこちらよりご覧頂けます