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三井住友VISA太平洋マスターズ 2006
今週も、ボランティアが大活躍!
思わず、そちらに注目せずにはいられない。明るい声の持ち主は御殿場の名物ボランティア、石川季夫(すえお)さん、58歳。
今大会のボランティア歴は、15年になる。
スコアラー関連のチーフとして、各ボランティアを予定時間内に所定の位置につかせたり、トランシーバーなど機材の事前準備といった業務を一手に引き受ける。
スタート直前には、各組のマーカーとキャリングボードを選手の前まで先導し、引き合わせる。
この一連の流れがスムーズに行われるのは、石川さんの合図あってこそだ。
今大会が、ボランティアを導入して今年で21年目。
しかし、当時はそんな光景は見られなかった。
マーカーもキャリングボードも、ただ黙って選手のあとをついて歩き、ただなんとなく1日の業務が終わる・・・。
「僕は、それではおかしいと思ったんです。だって会社の商談でも、名前を名乗らずに始めるってことはありえない。ボランティアの仕事も、それと同じだと思った。お互いに“大会を盛り上げる”という共通の任務を背負ってここにいる。そんな者同士が最後まで名前さえ知らないなんて。それじゃあ、あまりにも寂しすぎます」。
思い切ってスタート前に選手に声をかけてみよう、と思いついたのは10年前だった。
ちょうど“ボランティアチーフ”に抜擢された年。
「最初は勇気が要りました」。
選手の前に立った瞬間、頭は真っ白に。
緊張で、足が震えた。
それでも、声を振り絞った。
いっせいに視線を浴びたが、いっそう声を張り上げた。
「僕らは別に、お金をいただいてここにいるわけじゃない。上手に出来すぎるほうがおかしいのだから。ヘマをしたらヘマをしたでいい・・・。そういう気持ちだったんです」。
以来、石川さんの声は御殿場の“定番”となった。
自分の声に振り向いて、選手が「よろしく」といって笑顔を向けてくれるのが嬉しい。
時には、わざわざ歩み寄ってきて、握手を求める選手もいてくれる。
「僕はもちろんですが、マーカーやキャリングボードさんには選手のみなさんのそんな心遣いが何よりの思い出となるのです」。
5年前には、さらに新たな試み。
その組に外国人選手がいる場合は英語でボランティアを紹介することにしたのだ。
「ジェントルマン! ディスイズ・・・」。
一生懸命に覚えた、たどたどしい英語。
途端に、あたりは笑い声に包まれるが、「でも、シーンと静まり返っているよりは良いじゃないですか?」と、石川さんは平然としたもの。
大会2日目は、ダレン・クラークと片山、丸山の組。
セルヒオ・ガルシアの組でも英語で紹介したら、ギャラリーから「スペイン語で言えよ」との意見が飛んだ。
太平洋クラブ宝塚コース所属のホストプレーヤー、リッチ・テイトと韓国のドンファンの組。
豪州出身ながら、関西在住のテイトには「大阪弁で紹介してよ」と頼まれた。
選手の中から「ここは日本なんだから。全部、日本語で言えば良い」と、言われたこともある。
もともとは、選手への気遣いでしたことだ。
「それを否定されたような気もして少し寂しかった」が、石川さんはひるまない。
「人の意見は十人十色。いろんな考えがあって当然です。それよりも大事なのは、そんなやりとりによって、その場に自然な笑いが起きること。僕らが大会を盛り上げることによって、選手のみなさんも少しでもその気になって下されば嬉しい。さらに、ギャラリーのみなさんにも楽しんでいただけるならば最高ですよ」。
最終日は、第3ラウンドの残り競技と最終ラウンドが行われる。
ボランティアのみなさんにとっても大変タフな1日が予想されるが、石川さんのような方が大会を支えてくださっていると思うと心強い。