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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2010
池田勇太は「今週は勝つことしか頭にございません」
表情を変えるとしたら、おびただしいフラッシュに辟易としたように、ときおり顔をしかめるときくらい。
平成の若大将は、どんな場所でも愛想笑いなんか絶対にしない。
逆転賞金王にむけて、厳しい表情でビシっと一言。
「今週は、勝つことしか頭にはございません!」。
ぶっきらぼうな物言い。たとえスーパープレーでも、ほとんどの場面でツンととがらせたままの唇。
そしてどんな場面でも、我流を通す。
たとえ時代遅れと言われても、3タックのパンツをこよなく愛し、ファッションのお手本は今でも大好きな昭和の人気ドラマ「あぶない刑事(デカ)」だ。
一見、鼻っ柱の強い性格は、しかし人情味に厚く、本当は涙もろい。
昨年の謝恩パーティは満員の招待者の前で、紋付き袴姿で号泣した。
支えてくれた人たちへの感謝の気持ちでいっぱいの、心温まる会となった。
3人揃っての記念撮影の合間に今年も2年連続で、ともに賞金レースに加わった石川遼が、ふと向こう側の池田に視線を投げて言った。
「ベスト姿、かっこいいですね!」。
そこで初めてニッコリとした。褒められて、まんざらでもない笑顔。本当は素直で、女手一つで育ててくれた母ゆみさんや、大好きな祖父母を大事にする24歳の、優しい素顔がのぞいていた。
「自分の力で今年もここまでこぎつけた」と、昨年、取り逃がした賞金王に最後まで執念を見せるのも、いつも暖かい声援を送ってくれる人たちの為でもある。
天候、気温などを考慮して、いよいよ最終戦の今週は新しいアイアンを投入した。ベテラン選手でさえ、「昔のプロの匂いがする」という“職人派”は、クラブへのこだわりも人一倍だ。
自ら監修した“勇太モデル”のパターは、ひとまわり以上も上の大先輩、丸山茂樹もいたく気に入って、バッグに入れたほどだ。まずは“武士の刀”に吟味に吟味を重ねてこの頂上決戦に臨む。