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アジアパシフィックオープンゴルフチャンピオンシップ パナソニックオープン 2010
今週は石川のお手本!! 市原弘大はアジアの資格で参戦
両ツアーの雄がしのぎを削る今大会に“アジア枠”で出場している日本人プレーヤーがいる。
プロ9年目の市原弘大だ。今週、石川遼が、ティフトン芝でのアプローチのお手本として挙げた選手でもある。
今をときめく19歳の口からその名が出たものだから、この日22日(水)の練習日は、午後からがぜん注目を集めた。
練習場で、カメラマンからいっせいにレンズを向けられ、何事かと目をシロクロさせた市原。
事情を知ってようやく納得したが、「今日はアプローチの質問ばかり受けましたよ」と、苦笑い。
埼玉平成高時代は市原も、将来を嘱望されたジュニアのひとりだった。日本ジュニアを制し、世界ジュニアに3年連続で出場。卒業後の2001年は19歳でプロデビューを果たし、さあこれから、というときに苦難は押し寄せた。
もともとパットに不安があり、長尺パターを握ってもう7年。一時期はアドレスで手が動かなくなるいわゆる“イップス”にかかり、長く苦しんだ。
ようやく、復調の兆しが見えたころに、今度は腰のヘルニアを患った。
まだ、ツアーの出場権を持たないころは「ミニツアーなど、出られるものは何でも出た」。1週間のうちに、4試合を掛け持つこともざらで移動の際に、体にかかる負担は本人が想像していた以上だった。ピーク時の1ヶ月間はあまりの痛みに歩くことさえままならず、1年半もクラブを握れないようなつらい時期も、トレーニングに取り組むなどして乗り越えてきた。
アジアに初めて足を向けたのもこのころ。「試合があるところなら、どこへでも行く」と、2008年から本格参戦。昨年はトップ10入り5回。賞金ランクは13位につけて、初シードを獲得した。
石川が関心を寄せた、インパクトで思い切り後ろにヘッドを引き戻すアプローチもアジアで培ったものだ。
「出始めて最初のころは、深いラフに手を焼いて。他の選手を見たり、色々と模索して、あのスタイルを取り入れるようになった」という。
「そういえば、今年のダイヤモンドカップで回ったときに、遼くんが興味を示していましたねぇ」と、もともとのんびり屋の口調に、かすかにプライドを滲ませた。
今年は日本とアジアに加え、アジアと共催トーナメントの多い欧州ツアーの選手証も持っている。
「1年でいっぺんに3つ持っている人は、なかなかいないんじゃないかな」と、ちょっぴり誇らしげに胸をそらした。
前日火曜日は、日本ツアーの選手証をつけていたが、アジアの選手たちに「お前は今週は、アジアから出ているんだろう?」と、言われて慌ててつけ直したほどだ。
アジアと日本から、ほぼ半数の選手が出場する今大会は、「知らない顔も多くて。いつもと雰囲気が違う」と、戸惑う日本人選手も少なくないが、市原はむしろ、“ホーム”の気分でプレーが出来る。
「アジアンツアーは気候のせいもあって、時間がゆっくり流れていく感じなんです。そこが、性格的にも僕には合っているかな」と笑った28歳。
勝てば、両ツアーのシード権が得られる今大会。
「ここで、結果が出せれば最高ですね。後半戦は、このままだと日本でも出場できる試合が減ってしまうし、大事な1戦になりそうです」と、本戦を前に気合いを入れ直していた。