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The Championship by LEXUS 2010

兼本貴司が単独首位に

最終18番は、「あれはヤマ勘。寄せにいったら入ってしまった」。左のカラーから、下りの10メートルは、「2メートルくらい打ち出すスライスライン」。
すばり読みどおりラインに乗ったボールがカップに沈んだ瞬間は、あまり感情を表に出さない選手も小躍りした。

笑顔でギャラリーに手を振って、締めはなかばおどけ気味のアッパーカットのガッツポーズだ。
最後のバーディで、2打差の単独首位に躍り出たリーダーは、しかしちょっぴり弱気だった。
「優勝は……どうかなあ」と、首をひねった。

昨年5月の三菱ダイヤモンドカップは難攻不落の大洗で、プレーオフを制して念願のツアー初V。
あの舞台と同県の、ここ茨城県の大利根カントリークラブで、当時と重なる部分がたくさんある。
たとえば3日間を通じて松林の下をくぐらす「低弾道」のショットでフェアウェーキープに徹している点。

ツアーきっての飛ばし屋だが、難コースで飛距離は封印。
「小さなスイングで、わざと低く打ち出して、曲がり幅を抑えている」。
地面を転がして、「運が良ければグリーンまで運べるような」。ランで距離を稼ぐコース攻略は、昨年の大洗でも実践した方法だ。
今週はそれが3日間ともうまくいっていることは、確かに明るい材料だがただひとつ、不安なのは、ゲーム展開。

「3日目にトップというのは、僕のゴルフ人生で初めての経験」。
おそらく、尋常ではないプレッシャーに襲われるだろう。
そのときに、この3日間のようなゴルフが出来るかどうか。
「僕の普段の球の曲がり具合から見ても、あまり期待出来ない」。
ツアー通算2勝目の勝算も、「25%くらい」と、えらく低く見積もった。

2位と2打差もこのコースでは、あってないようなもの。
「誰が勝ってもおかしくない。8とか9(アンダー)の選手も圏内」と、薄氷の状況はせめて尊敬する中嶋常幸に、今晩中に最終日最終組の戦い方の伝授を乞おうか。

むしろこの日3日目に、すでに崩れて後退するという筋書きを勝手に描いていたから、4アンダーの68は嬉しい悲鳴だ。
「たまたま1日伸びちゃっただけでしょう。きっと明日は取れてもバーディが1個か2個」と、どこまでも自虐的なメンタルが、逆に吉と出るか。

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