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中日クラウンズ 2010

丸山茂樹が首位浮上

前日2日目に丸山が予言していたとおりの展開になってきた。この日3日目もスコアは伸び悩み、自身の通算7アンダーが単独トップ。マルちゃんスマイルで思わずおどけた。
「あのへんは、名解説者でしたね!」。
優勝スコアは「12から13アンダー」と踏んでいた。目標まであと5つ。
「そこまで持っていけたらチャンスだと思っている」。
また、実現できるという自信もひそかにある。

9年戦ってきた米ツアーからの本格復帰1年目の昨年2009年。10年ぶりに立った和合で確信したことがあった。
「ここは林の下をくぐらすローボールが有効だ、と」。
そのせいで、たとえ距離が残っても構わない。「なんなら、地面を転がしてでも、チョロでもいい。とにかく、低い球で打って行くのがいい」。

パワーヒッター有利なコースでは、さすがにそれだけではなかなか通用しないがここ和合なら、「昔ながらの持ち味で戦うほうが、僕自身も安心してやれるから」。
打ち上げになったグリーンは硬くてスピードがあり、上空には名物の強い風が吹き荒れる。

「僕は最近のゴルフスタイルではないし、遼クンみたいなゴルフでもないけれど」。
それでもここでなら、低めのフェードでポイントを捉え、多彩なアプローチとパットでしのぐという自分の持ち味こそ生きると実感できた。

経験も生かせる。
たとえティショットでベストポジションを外しても、百戦錬磨の40歳は第2、第3のルートを持っている。
たとえば18番は左のラフに打ち込んだが「外すなら、この“Bポイント”しかないと思っていたから」。

第2打は、まともにピンが狙えないポジションだが、こんなときでも次なるターゲットは心得ている。残り170ヤードは6番アイアンで「グリーン左のバンカーがベスポジ」と躊躇なく、運良く左のエッジにしがみついたバーディパットで難なくパーを拾って破顔一笑してみせた。

自分も20代のころは、距離の短い1番や、16番のパー4で、「ガンガンにマン振りしていた」。しかし、年齢を重ねた今は、40歳なりのゴルフでも十分に魅了出来るという自信に満ちている。
ショットやパットの後で、時折こぼす大きな独り言が、大ギャラリーの爆笑を誘う。
「ついひとこと言ったあと、すごく喜んでくれるので・・・。そういう味付けもしておこうかな、と」。観衆との対話を楽しみながらのラウンドにも、ベテランらしい風格が漂う。

先週は、同期の藤田寛之がツアー通算9勝目。2週連続の40代Vを期待する声には「僕らがどう盛り上げても、あまり注目されないからねえ」と、苦笑したがそれだからこそ、最高の形で存在感を示したいという気持ちもある。

近ごろではどのニュース番組も、まず石川の活躍から始まって「僕なんか、ちょろっと写っていたらいいほう」。紙面もまずは、どんな順位でも石川が華々しくトップを飾る昨今である。
「遼クンスペシャルだね」と冗談交じりに、でも自分がやるべきことは、分かっているつもりだ。

「優勝して目立つしかない。・・・いや、もちろん、ゴルフは自分のため。目立つためにやっているわけじゃないけどね」と、今度は照れ交じりに相好を崩したが、「僕らが活躍することで、同年代の人たちを勇気づけられる。そういうことが、大事なんだと思っているから」。今週はマルちゃんが、連休なかびの最終日を感動の渦に巻き込む。

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