Tournament article
中日クラウンズ 2010
杉原輝雄が世界記録を達成
「杉原さん、51回おめでとう〜!!」。
たちまちあの柔和な笑みを浮かべ、関西弁でたしなめる。
「いや、まだ打ってへんよ。これからです」。
笑いとどよめきの中で放たれたティショット。
その表情に、ホッと安堵の気持ちがにじみ出た。
百戦錬磨の72歳も、実は今週は、始まる前から大きなプレッシャーを感じていた。
今週、無事初日を迎えれば、同一大会連続51回出場は、アーノルド・パーマーがマスターズで達成した50回を越えて、世界記録となる。
先週のつるやオープンの会場で、「祝福のセレモニーをやらせてもらいます」と聞いて、身の引き締まる思いがした。
「みんなの期待を裏切ることがないように」。
前立腺ガンの爆弾を抱えるドンだが、深刻な状況を自ら茶化すように、よくこう言う。
「僕はいつ死ぬかわからへんよ」。
もちろん冗談だが、半分は本気である。
「僕もいつどうなるか分からない」。そんな思いが重圧となった。
「初日は必ずティグラウンドに立つとともに、良いプレーを見せないといけないが、練習しすぎて体を壊してもダメだし、体調管理を心がけ、車の運転も慎重にした」という。
実際、本人には記録達成など本当はどうでもいい。
「数字的には世界記録になったが、ミスター・パーマーとは中身が違う」と、浮かれる気持ちは微塵もなくむしろ、「お世話になった人たちを喜ばせたい」という思いのほうが強かった。
プレーでも、魅せた。前半は粘りに粘って、9番の第3打はあわやチップイン。
「どうせなら、入って欲しかった」という言葉も、自分のためではない。
この日は連休初日も重なって、駆け付けたギャラリーは1万3252人。「僕の応援ではなくて、遼くんのだけど」と笑わせてから、「人の多いところで直接入れて、喜んでいただきたかった」と悔しがる。
同時に「僕も、まんざら捨てたもんじゃないと、自負しております」と、3オーバーのハーフターンにちょっぴりと、胸を張る。
7番から13番までボギーなし。7オーバーの77は、約2年ぶりの70台をマークして、目標の「エージシュート」の可能性も、大いに匂わせるラウンドだった。
「明日も、良いプレーで盛り上げたい」。
さらに来年の52回連続出場にも意欲的。
「杖をついてでも、出させていただきたいね」と、ニヤリ。
もし達成すれば、ゲーリー・プレーヤーが昨年のマスターズで記録した、同一大会52回出場(1973年に一度欠場)の世界記録にも並ぶことになる。