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三井住友VISA太平洋マスターズ 2011
鈴木亨が単独首位に(初日)
ひどい首の痛みを訴えたのは2月末。しかし原因もつかめぬまま開幕戦を迎えた。ごまかしながらの連戦は、ついに5月に悲鳴を上げた。
痛み止めの注射も効かない。「もう歳だし、今までのスイングではダメなのか」。打ち方も、さまざまに工夫を凝らしたが、いっこうに痛みは去らない。ついに精密検査を受けて「首のヘルニア」と判明したころには、すでにシーズンも半分を過ぎていた。
夏以降も悪戦苦闘が続いたが、結果が出ない。
先々週は、2009年に優勝経験のあるマイナビABCチャンピオンシップを、ひとつの山場と捉えて臨んだが、予選落ちを喫した。
「ショックだった。気持ちがどんどん落ち込んだ」という。
これほど首の痛みがひどくなる前は、どこかに「自分はそんな風になるはずがない」という過信があった。
「自分がそれほど致命的な怪我をするわけがない、と」。
自負があっただけに、今回の故障は相当堪えた。
そこから浮上のきっかけは、師匠とあがめる中嶋常幸からの励ましだ。
「心に響くメールをもらった」と、それを糧に吹っ切れた。
「もっと自分らしさを出していこう」と心に決めた。
スイングへのこだわりを捨て、道具に解決策を求めることをやめ、「構えたら、余計なことは考えずに振り切ろう」。
そう決めてここ御殿場にやってきた。
「その途端にこのスコア」と、ベテランの声も弾む。9月から間に棄権1回を挟んで出場6試合連続の予選落ちが続いていただけに、本人にも思いがけない好発進には、葛藤もある。
「今年、これまであれだけ悪かった選手がいきなり結果を出そうなんて。人生、舐めてるよね」と、自嘲の笑み。
反面、昨年まで18年連続の賞金シードは、現在のシード選手の中では最長記録というのは、やっぱり誇りだ。
「18年やってきて、そのくらいのことがあってもいいよね」と、経験と実績に裏打ちされた自信と期待も、がぜん膨らむ。