Tournament article
ダンロップフェニックストーナメント 2011
連覇をねらう、池田勇太
月曜日に、ここ宮崎入り。空港に降り立つなり、大勢の地元ファンの歓待を受けた。吹き抜けの特設ステージで、花束の贈呈式。地元テレビ局のインタビューを受けて「今年も宮崎に帰ってきました!」。
本人も、勝って初めて知った毎年の恒例行事だ。昨年覇者の歓迎セレモニーは、各フロアからファンの拍手と歓声がディフェンディングチャンピオンの頭上にいっせいに降り注ぎ、気分も盛り上がらないわけがない。
「凄く歓迎されているな、と。去年、勝って良かった、といまようやく感じられたような。ここでプレーすることの良さを、改めて感じるものがあった。そういう大会の良さを、ひしひしと感じながらコースに来た」と池田は言う。
今季は、サン・クロレラ クラシックでツアー通算9勝目を挙げながら、以降は「腑に落ちない成績」が、続いていた。
しかし、大好きな洋芝と、松林にセパレートされた風光明媚なここフェニックスカントリークラブに足を踏み入れれば、そんなモヤモヤも自然と消えて、代わりに持ち前の勝負魂が、がぜん頭をもたげてくる。
「今週は勝ちに来た」。それどころか、次週は平塚哲二とペアで臨むワールドカップと、いよいよ今季最終戦の「ゴルフ日本シリーズJTカップ」を含めて残り3戦。「このままグデグデで終わるのは、本当に嫌で。残りすべて勝って終われるような、そういう気持ちでやりたい」と、いえるまでの自信も戻ってきた。
「確かに、今年は日本も俺も、いろいろあったと思う」。自身はといえば、クラブ調整の遅れから来る不調など、思い返せばつらい思い出のほうが多かった。
しかし、「振り返ってもキリがないし、振り返りたくもない」と、あえて過去は、すべて封印して前を向く。
「今までどうのこうのというよりも、これから先をどうするか。本当にこれから1分後に何をしようか、というのと一緒で、明日はどうしようか、明後日は来週は、そして来年は、というふうに。俺らしく前を向き、過去のことは関係ないよみたいな雰囲気で、歩いていければそれでいい」。
それと同じ意味合いで、先週は大学の後輩の優勝も、目下賞金ランク1位の裵相文(ベサンムン)の賞金王を阻止するとかいう頭はない。そもそも、「阻止するって何よ」と、逆質問。
「阻止って言葉が俺は嫌い。なんで、同じ舞台で一生懸命戦っている選手の邪魔をしなきゃなんないの。ヒデが勝ってプロが情けない、と言われるのは当然だけど、それはそれで結果だし、裵(ベ)ちゃんがいま1位なのも、彼がそこまで積み上げてきて、頑張った結果でしょう。それで俺がどうする、というのはまったくない」と、熱く語った。
それよりも何よりも大切なことは、「俺がここで、池田勇太らしいゴルフをすること」と、力説した。
「そうすれば、自ずと結果は付いてくるだろうし、今週はそういうゴルフが出来るという気持ちにもなっている。今週は期待して頂いていい。お待たせしました、という感じでいる」といよいよ本戦を前に、これまで我慢してきた分を吐き出すかのように、前向きな言葉がポンポンと飛び出す。
初日、2日は裵(ベ)と昨年の全米オープン覇者、グレーム・マクダウエルと同組に「2人に俺が付いていくのか、引っ張って行くのか。それは分からないけれども、とにかく俺を見に来てくれる人たちに、良いプレーを見せられれば、自ずと結果はついてくる」。
地元ファンの恩に報いる方法は、ひとつしかない。大会は38回と、長い歴史の中でまだ3人しか達成してない偉業に向けて。「勝つために俺はここに来た」と、連覇への熱い思いを繰り返した。