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サン・クロレラ クラシック 2011
ベストアマチュア賞は、ハイレベルな戦い
そのほかにもタイトルは数知れず。もはや、いずれもアマチュアという枠には収まりきれない逸材である。
「まずは予選通過を目標に」は、アマチュア選手がよく口にする常套句だが、藤本さんにはそんな意識は最初からない。
「4日間やるつもりで来てますから」と言い切る剛胆さは、OBの池田勇太と似ているかもしれない。難攻不落と言われる小樽も「回りやすい」と、こともなげに言う。
「今日はほとんどフェアウェイを外さなかったので。そうでなかったら、分からなかったですけれども」と、笑う。
23位タイからスタートしたこの日3日目は出だしこそボギーが先行して躓きかけたが、ずば抜けた適応能力で、あっという間に持ち直した。
6番から6つのバーディで、通算6アンダーは14位タイとさらに順位を上げて、「明日はトップ10入りを目指す」と言う。
松山さんとのベストアマ争いは、眼中にはないようだ。
「別の大学なら話は別ですが、同じ大学なんで。そこはもう、どちらが獲っても良いかな、と」。
そのへん先輩は寛大だが、後輩は遠慮もなしに牙を剥く。「藤本さんに、負けたくない」と、競争心を剥き出しに、この日64はインスタートの最終9番パー5で280ヤードから、スプーンで3メートルに乗せたイーグルチャンスが決まっていればコースレコードの63に並んでいたはずだった。
「知ってましたよ、遼ですよね?」。
タイトルホルダーは、同学年のライバル。石川遼は、予選落ちをしたにもかかわらず、松山の前にこんな形で立ちはだかった。先週のセガサミーカップから、引率している阿部靖彦監督も手厳しく、「だからお前は遼より下なんだよ」。恩師は教え子の心に火をつけるのが、あいかわらずお上手だ。
この日3日目にはスタート前に「68で回って来い」と、松山に指令を出したというが、そんなノルマも軽々と飛び越した。監督も、本人すらも、思ってもみない快進撃。「そんな気はさらさらなかったんですけど」とあどけない、19歳の照れ笑い。
いよいよ、首位と6打差の6位タイから出る最終日でさえ、松山さんには順位よりも、ベストアマチュア賞うんぬんよりも、こっちのほうが気になる。
「とにかく藤本さんに勝ちたい。試合であまり勝ったことがありませんので、先輩には勝ちたい」。そこもまた19歳の無邪気さで、改めて大学の先輩に競争心を剥き出した。