Tournament article
つるやオープンゴルフトーナメント 2011
ディフェンディングチャンピオンは藤田寛之
先週はマスターズから帰国第1戦のジャパンゴルフツアー開幕戦「東建ホームメイトカップ」。2011年の1日目に8位タイとまずまずのスタートも、「パターが入ってくれて助かりましたけど内容には満足していないです」。
そのコメントは最終日まで終始一貫していて、翌2日目も「今日も昨日と同じ。パットが尋常じゃないくらい入ってますけど、思うようなショットが打てない。明日からお先真っ暗」と、繰り返すばかりだ。
しかしその日も6位タイにつけ、順位だけ見ればけっして悲観する結果ではなかった。
それでもなお「たまたまスコアは良かったですけど、これでスコアまで悪かったら落ち込んでしまうくらい、本当にひどいです」。
ひとしきり言い募ったあとで、ふと我に返って苦笑いでポツリ。
「・・・初戦からなんでこんな悩んでしまうんですかねぇ、嫌ですねぇ」。
ちょっぴりおどけた口調でそう言って、報道陣を笑わせたのだった。
もっとも、いまは石川や池田に象徴されるように、闘志を全面に押し出して前へ前へ、というコメントをする選手が主流の中で、そんな姿勢こそがこの選手の魅力でもある。
「これほどのトッププレーヤーでも自分たちと同じように、日々悩んだり、落ち込んだりしているんだ」という共感が、特に藤田と同世代のファンの間に広がっている。
苦しみながら、もがきながらも地道に努力を積み重ねて確実に足跡を残して歩く。
その姿がファンに親しみやすさと「俺だって、私だって」というやる気を起こさせてくれる。
もちろん、一流のアスリートの一人であるのだが威張らず、気取らず、むしろ謙虚であろうとするところも人気の秘密だ。
連覇がかかる今週も、けっして大きなことは語らないだろうが、師匠の芹澤信雄に言わせれば、「あんな可愛い顔をして、ひとたびコースに出たらホントに彼はスゴイんです。集中力。半端じゃない。見ていて怖いくらいです」。
そして、ゴルフに賭ける思いも。
「アイツは本当に自分が納得するまで、絶対に次に進まない。妥協を許さず、地道に努力を重ね、ひとつひとつ確実に階段を上がってきたんです。その積み重ねがいま、まさに花開いたのだと思うんですよ」。
賞金や数字よりも、「いかに納得の1打を打つか。ファンのみなさんを感動させられるプレーが出来るか。今年もそれを重視していきたい」という藤田。
自身初のマスターズは残念ながら予選落ちしてしまったが、それでも今シーズンはオーガスタでの2日間で感じた何かをきっとまた、彼なりのやり方で表現して、谷口徹とのプレーオフ3ホールを制して頂点に立った、昨年大会以上のドラマを見せてくれるはずだ。