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ダイヤモンドカップゴルフ 2012
藤田寛之が3打差の単独首位に
先週の「とおとうみ浜松オープン」は、2ラウンド目の17番ホールから続いていたボギーなし記録。
「あ、そういえば・・・」と思ったときは遅かった。
「フェアウェイからアプローチウェッジで簡単にボギーにしちゃった」と頭を掻いたが、これまでの自己最高だった60ホール連続記録は、前半の5番で無事、更新済みだったどころか9番での65ホール連続記録達成は、1999年のJGTO発足後としては、歴代13位タイの記録に「じゃあ、いいじゃないですか」。
すぐにこだわりを捨てて、後半もまた3つのバーディを積み重ねた。
今週は、月曜日に静岡県のレイク浜松カントリークラブで行われた全米オープンの最終予選会で、プレーオフを含めて37ホールの長丁場で「3回もチャックリをした」と、本来なら得意なはずのアプローチにも、若干の不安があったこと。
また、この時期はまだ「薄い芝質」の対策として、14番や最後の18番ではグリーンの外から安全にパターを握った。
先週から投入した特注の新兵器の働きもすこぶる良くて、この2日目で奪った8つのバーディはこの日、4位タイに浮上した弟弟子の宮本が、こだわりを見せている部分でもある。
今週は最多バーディ賞として、三菱食品提供の100万円がかかっている。
午前組の宮本もまた、この日8つのバーディと、2日間合計はこれまた藤田と同じ14個を獲得して「それ狙い」と発言していたことについて、深い絆で結ばれた者同士ならではのジョークを交えて、先輩がちくりと刺した。
「そういう目先の現金はダメでしょう。プロが欲しいものはそういうものじゃない」。
プロとしての生き様に、ことのほかこだわりを見せるのが藤田だ。
「僕は優勝というか、栄誉が欲しい。この人は凄いな、というような圧倒的な強さが欲しい」。
それは、真の実力者が持つオーラとでもいうべきもの。
「自分に本当に力がついてくれば、自然と出てくるものなんでしょうけど」と、この人はまるで他人事のように言う。
「いま強い人が発しているもの。晋呉や、勇太や、遼くんとか」と、自分はまるで蚊帳の外にように言うが、谷口徹と並んでいまもっとも強い40代の一人が藤田だ。
この予選ラウンドで、共に回ったルーキーの藤本佳則が言っていた。
「もともと上手い選手であることは知っていますが、僕も藤田さんほどパットを決められたら、どれだけいいか。ティショットから、アプローチの距離感やリカバリーなど、すべてにおいて藤田さんは凄い。こういうふうに、スコアを作って行くねんなと」。
まだ22歳の新人の、そんな感嘆の声を伝え聞いたベテランは「へへへ」と照れたように笑って「嬉しいですね。僕も、フレッシュな藤本くんに、良い刺激を受けた2日間。藤本くんのまっさらなキャンバスに比べて、僕のはいろいろ書きすぎて、もう書くところもないですから」と自嘲気味に言ったが、経験という名の絵でもはや余白のないキャンバスこそ、プロ21年目のプライド。
さっそく今季2勝目はこのまま大差で逃げ切って、ほかを寄せ付けない圧倒的な強さで手にしてみたい。