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ブリヂストンオープンゴルフトーナメント 2012

藤田寛之が今季4勝目を逃す

戻ってきたクラブハウスで「ごめんね・・・」と谷口(右)に謝られて、思わず苦笑いの藤田。
この日はひとつ上の先輩に、2回も謝られた。最初は朝。スタート前だ。
「藤田くん、ごめんね」。前日3日目のことだ。やはり朝のスタート前に、「最終日は一緒に最終組で回ろう」と、約束をさせられた。しかし、けっきょくひとつ前の組で回ることになった谷口徹は、「“おだりゅう”が、余計なことをするから」と言い訳をした。

3日目は、小田龍一が65で回って3位タイ浮上。谷口も、最終ホールで執念のバーディ獲りも、先に上がった小田に最終組の席を奪われたと不満を言った。

「だからごめんね。でもせめて今日はビッケ(藤田の愛称)とプレーオフをする」と、谷口は約束して、ひとつ前の組で出ていった。
「谷口さんの筋書きとおりでしたね。逆に僕が、その約束を果たせなかった」と、悔やんだ藤田。
と、すぐに口を尖らせ「でもあんなことされたら、どんなに頑張ってもプレーオフには残れない!」。

ラフからの3打目を入れた18番の谷口のイーグルは、藤田も18番の第2打を打つ前にそうと知った。まさに土壇場の「どんでん返し」。もとい「谷口さんのイーグル返し」にも「状況は把握出来ていた」。

しかし、藤田のラフからの2オンは不可能に近く、バーディを獲ってようやくプレーオフという状況も分かっていて「パットをショートしたのは悔しい」と、約7メートルはカップにも届かずに、パーに終わって谷口に勝利を譲った。

「谷口さんが入れたのは凄いこと。しょうがない」と、言いながらもあまりの「急展開」には仏の藤田もひとこと言わずには気が済まない。
「今日の自分の3アンダーには合格点。ただ、自分の台本に載ってないことが起きただけ」と、現実を受け入れながらも「あんなの普通、入れますか」と、ちょっぴり責める口調になった。

「どこまで根性、凄いんですかね」と、言い募った。
「勝ちは勝ちだけど、やり方がスマートじゃない」と、ひとしきり吐き出したあとに「自分がプレーオフに残れなかったのが悪い。神様が谷口さんを選んだので仕方ない」。

奇跡の連覇に沸きに沸いた袖ヶ浦は、興奮さめやらぬまま引き上げてきたのは奇跡のチャンピオン。
クラブハウスで藤田を見つけた谷口が、ちょっぴりバツの悪い顔で駆け寄ってきた。

「ビッケ、ごめんね・・・」。
ひとつ上の44歳に、子供のように可愛らしく謝られれば怒れない。誰にでも、歯に衣着せぬ物言いも、「谷口さんは僕にはいつも優しいので」。だからやっぱり憎めない。



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