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三井住友VISA太平洋マスターズ 2015
首位キープの片山晋呉は「自信とは、僕の場合は自分を信じること」
8番では残り190ヤードの窮地も、4番ユーティリティで、確実に3メートルのチャンスに乗せてきた。16番では右の林に打ち込んで、「もう何も出来ない。打つ球もなく、どういうショットを打つかも決められなかった」と、無我夢中のリカバリーショット。3メートルのパーパットもしのいで、この日の2アンダーは「いいゴルフ。最高ですね」。2位に1打リードの単独首位で最終日を迎える。
2打差の3位には、バッバ・ワトソン。「楽しく見てたよ。あんなに球を曲げてやるんだな、とか」。感心しながらそれでも彼も、この日はかなり苦しんでいるように思えた。「僕も、1回彼にオーバードライブしたし」とニヤリと、「5番でね、彼がチョロしたときに。たぶん、低いスライスで行きたかったんでしょうね」と、その意図を想像しながら「でも、勝ちは勝ちでしょ」。
そばで暴れる世界のレフティを横目に、5度の賞金王は圧倒的な安定感で凌駕した。
これまで過去55回の最終日最終組のうち、優勝は22回。「僕には何十回も逆転優勝をしたり、何十回もの経験がある。自信を持つとは、僕の場合は自分を信じる方の自信ですけど、今日はそれくらい良い内容のゴルフだったと思う」。
来年早々には43歳になるが、しゃにむに勝ち星を追いかけていたころとは違って、近頃では周囲にもよく目を配り、一歩引いて、ゴルフを楽しむ姿勢が見られる。
「今は周りや支えてくれる人たちのおかげでこうして、毎週毎週、楽しく優勝争い出来ることに対して感謝している」。
初日から、「そのうち言うから」と、言い続けてきたとっておきの話をこの日は、ずぶ濡れのまま駆け込んできた記者会見場で、ほんのちょっぴり披露した。今大会の開催前に感化を受けた本の一文。
片山の言葉を要約すると、いま咲いている花は、自分が水をやったり大切に育ててきたからこそ。そして、未来にまた美しい花を咲かせるために、これからも頑張りましょうよというような内容だった。
「良い言葉だなって。自分も、これ以上出来ないというくらいの努力と、時間を重ねてきて、明日はその思いを出す18ホールになればいいのになって」。
ワクワクとした気持ちで最終日の朝を迎える。「興奮して、眠れないくらいの朝をね」と、それは若い選手の緊張や、プレッシャーとは違って、翌日の遠足を楽しみにするような感覚にも似て、「明日は2度目の優勝をして、また赤いジャケットを着て、祝杯を上げたいと思います」。
2008年以来となる御殿場での2勝目なら、生涯獲得賞金で、1位のジャンボ尾崎に続く、史上2人目の20億円越えの記録もかかる。
最終日もまたバッバの目の前で、日本を代表する永久シード選手の貫禄を示したい。