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ダンロップ・スリクソン福島オープン 2015
最終日はいよいよ還暦・・・! 室田淳が4打差9位に
歓声と拍手は、もちろん還暦ゴルファーが、若手に混じってレギュラーツアーでV争いを繰り広げていることへの尊敬の念。しかし、当人にしてみれば「俺って、さらし者かなって。恥ずかしいだけだよ」と、シニアツアーと股にかける選手にとっては、ちょっぴり微妙なお年頃。
いつまでこうしてやれるのか。「毎年、レギュラーツアーはこれが最後と思う」。しかし、昨年は“準シード”ながら、最年長の賞金シード記録を作り、またこうして掛け持ち参戦をやっている。
誇らしいような、嬉しいような。「もう60になるんだと、寂しくもあるし、悲しみでもあるし」。
複雑な心境の中で迎える誕生日は、最年長優勝記録をかけて、4打差の9位タイから出ることになった。
「いや、無理だよ」と周囲の期待も、一笑に付した。「明日もみんなにきっと、バカにされてさ・・・。暑いし、きついな明日も。帰りたくなっちゃったよ」と、とことん後ろ向きの室田の前に、突然現れたレジェンド。
カツを入れられた。
「おい60! このやろ〜!」と、野太い声はあのお方。世界のアオキが絶賛した。「うめえなあ! おまえ、たいしたもんだよ!」。褒められて、励まされて、恐縮しきりでその手を握り返した。
さっきは、テレビカメラの前で、23歳の松山を励ましていたのとまったく同じ口調で、59歳にもハッパをかける青木。「60歳の明日は、60で回って来いよ! 60歳のエージシュートで優勝だ。ガッハッハ」。豪快さに気圧されて、室田もついうなずいていた。
「そうなれるように努力します!」。
ツアー通算51勝の伝説の人に、「行けるよ、頑張れ」と、背中を押されて身も心も引き締まった。
本当は室田だって頑張って、ここ東北の人たちを、元気づけたい気持ちでやまやまだ。
3日目は、約4500人のギャラリーが駆けつけて、選手の豪打に歓声をあげてくれた。
「福島で男子の試合はここしかないし、若い選手のショットを見て、みんなびっくりしてると思うんだ。レギュラーツアーのショットの凄さ。喜んでくれていると思うんだ。でも俺は、へなちょこショット」と、また自嘲の笑みでも、青木の励ましを受ける前とあとでは室田の口調は、明らかに変化していた。
「その中でね、還暦の選手も頑張っているんだ、と。それがゴルフのいいところなんだ、と。震災で被害を受けた人たちにそういう勇気を感じてもらうことが出来たら最高だよね。自分にはそういうことしか出来ないけれど。共に悲しみ、共に喜び分かち合い・・・。そういうのが出来たらいいよね」。
還暦最初の1日は、とりわけ思い出深い誕生日となりそうだ。