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RIZAP KBCオーガスタ 2016
石川遼が単独首位に
「向かい風に高い球を打つと、吹き上がる。フォローの風には流される。昨日と今日とを比べても、使う体力も、精神力もかなり違った」。
石川も、何度もクラブを持ち替え逡巡する素振りを見せた。
「時計の針にたとえると、3時方向ばかりじゃなく、2時から4時になったり」。めまぐるしく行方を変える大風の中で、ドライバーか、スプーンか。2打目以降のアイアンの番手もとっかえひっかえ、冷静に状況を見極めながらも攻める気持ちは揺らがなかった。
難しい状況の中でも「メンタル面のミスはなかった」。たとえ、ピンチを迎えても「ひるんではダメ」。前半は6番で2打目を左林の砂地に打ち込んだがそこからしっかりと、グリーンを捕らえてバーディを奪ってみせた。
7番では側溝に打ち込み救済を受けるなど立て続けのミスも、深いラフから確実に脱出して、パーを拾った。
11番ではこの日唯一のボギーも次の12番で、7メートルを沈めてすぐに取り返した。そこから3連続バーディにつなげた。「最後まで、思い切り良く振っていけた」。腰痛の後遺症など、みじんも感じさせないショットのキレ。強い海風が吹き荒れた午後組の中ではダントツの68で回って、単独首位に踊り出た。
この2日間は、同じ組で回った永野竜太郎と共にスコアを伸ばして、ハイタッチや、グータッチで盛り上がった。「お互いにベストを尽くして、プレーをたたえ合って、本当に楽しかった」。
永野はつい先日の21日に、出身の熊本に青木功や宮里優作らを呼んで、春の大地震で傷ついた地元の子どもたちを慰めようと、スナッグゴルフに興じた。
「永野さんと、重永さんの2人で取り組んでらっしゃることに、僕も近々協力出来ればいいなという話しをしました」と、震災後初めて被災地の一番近くで行われているトーナメントで、熊本への思いを新たにした石川だ。
後に続く、ジュニアにもますますくっきりと道をつける。今大会の「ジュニア育成プロジェクト」の一環で、今週は弟の航さんが初め
てプロの試合に挑戦した。
残念ながら、最下位に終わった航さんは「お兄ちゃんもけっこうラフに行ってるみたいなのに、僕とは全然スコアが違う」と、改めて
偉大な兄に感じ入った。
「力の差を感じている。この苦い経験を生かして頑張らなければいけない」と、ゴルフへの思いを新たにするきっかけとなった。
また石川には、2打差の4位タイにつけた、清水大成さんの頑張りも嬉しい。自身もまた、主催者にここまで道筋をつけてもらった者として、その恩恵を返していきたいとさまざまなジュニア競技を開催して、活躍の場を与えてきた中で清水さんは、2010年の「石川遼カップジュニアゴルフ九州地区大会」で優勝を飾った選手である。
清水さんは、「石川選手のように、日本を代表する活躍がしたい」と語っており自分の背を追うように、後継者は確実に育ちつつあることを、石川もひしひしと感じている。
この流れに拍車をかけるためにも「明日もガンガン、攻めていく」。今年もジュニアたちが奮闘する大会で、自ら大きな壁となる。