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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2016
逆転・賞金王には勝つしかない。谷原秀人が首位タイに
前週までの、賞金ランキング順に組まれる初日に、賞金1位の池田との直接対決では目の前で、序盤の池田の3連続バーディを見ても、眉ひとつ動かさなかった。
この最終戦で、やるべきことは決まっている。
逆転の賞金王にはここで、勝つしかチャンスはない。この日は序盤にいくつかカップに嫌われたが「最終的にはパットを決めて、とにかく勇太より上に行くしかない」。
6番パー5。「打ち下ろしを入れて、ピン248ヤード」と計算した2打目。3番ウッドを握り、右4メートルに乗せた。
「外してもバーディは獲れる」と、強気にねじ込んだ。
イーグルで、弾みをつけた。
後半は3つのバーディで、後半は伸び悩んだ池田を凌駕し、最後の18番も、右ラフから2メートルを残して「カップ2個半から3個フックする。入んねーんだろう」と読んだパーパットもしのいで首位タイで、初日を終えて「自分でも、凄いなとは思いますけど」。
どこか他人事のようなスタンスは、やっぱりこの日も相変わらずでもそれでも珍しく、自分を褒めた。
来年のマスターズの出場権をかけて、悲願の世界ランク50入りのためにもここで勝つしかないという、土壇場の大勝負も「緊張しない」。この日も、普段どおりにティーグラウンドに立った。
「メンタルは、強い方だと言われる。いつも平坦で、波立たない」。
デビュー当時はそれなりに、緊張したりもした。「若い頃は、誰でもそうだと思うが結果を出したいとか予選を通りたい、とか。でも、それをもう十数年もやってきた。優勝もしてきたし、雰囲気もわかっている。大人にもなるでしょう。年を取るのもプラスになることもある」。
38歳の自負もこのプロ16年で、重ねに重ねてきた努力のたまものにほかならない。
「練習がメンタルを強くする。練習しない、球も当たらないじゃ、メンタルはボロボロです」。
根拠のない自信はもろくも崩れるが、「これだけ練習してきたからと思えれば、失敗することもイメージしない」。
土壇場の大一番でも堂々といられるのは、血のにじむ努力に裏打ちされた、絶対的な自信があるからにほかならない。
ここで勝って、逆転の賞金王を狙うというのなら、初日の出遅れは禁物だと言い聞かせていた。
「初日にオーバーパーを打ってしまえば、取り返せない。自分の中では初日は、大切な戦いになると考えていた」。
最初の関門はクリアした。
今季3勝目を飾った平和PGM選手権では、池田との激しいバトルの末に、プレーオフ2ホールを制して、賞金1位(当時)を奪い返して言ったのは、「俺が、あきらめの悪い男で良かった」。
勝ってどうかの逆転・賞金王がかかるこの最終戦こそ、底抜けの粘り強さを出さなくてどうする。
「ここで優勝しても、勇太が2位になればだめだし、今年自分のベストを尽くして終われればいい」。
最終戦こそ諦めない男の本領発揮だ。