Tournament article
日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills 2016
初出場の高柳直人。親友との永野と追いつけ追い越せ・・・!!
「初優勝どころか、全英も直人にあいつに行かれるんじゃないか、と」。戦々恐々としたのは熊本出身の永野竜太郎。確かに、翌週に控えていた今大会の出場権がなかった高柳直人には、永野も「頑張って来週の出場権を取れ」とは言った。
直近の試合でトップ10に入れば、翌週の大会に出られるが、それすら楽々とクリアした高柳は、すわ優勝かという大活躍で、周囲を驚かせたのだ。
まして、大会の上位4人に与えられることになっていた全英オープンの出場権に1打差まで迫って、シード4年目の永野すら、まだ踏んでいないメジャー舞台に駒を進めんばかりの勢いに、親友として嬉しいやら、ハラハラするやら・・・。
全英オープンの出場権の権利がある上位4人に、タイスコアが出た場合は、規定により世界ランキングの最上位者が優先されることになっていた。同ランクで獲得ポイントがない高柳は実質、ランキング外というくくりで、真っ先にふるい落とされて、永野も残念だったような、ほっとしたような・・・というのが正直な胸の内だったのだ。
そんな親友の葛藤も知らずに、先週の最終日を戦った当の高柳。「僕は、全英とかそういうことよりも、とにかく集中して自分のゴルフをしよう、と。竜太郎にも励ましてもらって、なんとか来週の権利があるトップ10を目指そうと」。
無我夢中で気がついたら「いつの間にか、トップと2打差にいた」という。
初の決勝ラウンドで、自己ベストの5位タイにつけていたという。
今週は、高柳の地元、茨城県での開催だ。人生の節目には必ずお詣りにいく。鹿島神宮から車でも15分の鉾田市出身。先週は、試合から帰って、いつも可愛がってくれた祖父の位牌に手を合わせ、2週続きの健闘を誓った。
会場の宍戸ヒルズカントリークラブは地元でも、回ったことはなかった。前日火曜日の練習ラウンドでは永野とアウトの9ホールを回って噂以上の難条件に「ラフも長いし、かといって刻んでも長い。我慢大会になる」と教えてくれた永野の言葉に、高柳も異論はなかった。
「まずは、予選通過の最低ラインをクリアしたい」と、気を引き締めた。
今季はファイナルQTランク37位の資格を持つ高柳の生活の糧は、週に2度ペースのレッスン業。「予選を通ったら、土日に応援に行くよ」と、生徒さんたちも楽しみにしているから、その点でも2週連続の決勝進出は、必須条件。永野も負けてはいない。
昨年大会は2位。「去年良かったからといって、今年イメージが良くなる、というような甘いコースじゃない」と、こちらも気合いを入れ直した。
大会は、ここ5年というもの、初優勝者が続いているというデータに、頬を緩ませた。今季初戦の「SMBCシンガポールオープン」から今週までの獲得賞金を合わせた全英オープン日本予選ランキングで、同1位の金庚泰 (キムキョンテ)はすでに権利があるから、永野は現在実質5位。
勝てば先週、親友が取り損ねた初のメジャー切符も手に入る。
「チャンスのある限りは、全力を尽くします。直人よりは先に行きたい!」。
良き親友同志もそれぞれの選手権が始まる。