SMBCシンガポールオープン 2016

ジョーダン・スピースは1打及ばず(大会5日目、最終ラウンド)

再開の20分前に18番ホールにやってきて入念にラインを調べてバーディは沈めたけれど・・・
こうなったら、手ぶらでは帰らない。世界一は、勝つ気満々だった。日曜日はまだ明け切らない再開ホールに20分も前に来て、2メートルのバーディチャンスの回りを行ったり来たり。ラインを散々目に焼き付けると、今度は練習グリーンに向かって、7時30分ギリギリまで、何度もボールを転がした。
「あんなパットを残して一晩寝るのは難しい」。しかも、プレーオフの可能性を残す大事な一打だ。

「一晩おいて、帰ってきて、難しいラインじゃなくても嫌な一打だ」。
明らかにぴりぴりしていた。まだアドレスも取らず、厳しい表情で芝目にじっと目を凝らす世界一の姿をカメラに収めようとしきりにシャッターを切る報道陣に向かってピシャリと言った。

スピースに睨まれて、シンと静まりかえった中でバーディパットを沈めると、世界一の最後のたった1打を見るためだけに、早朝から再びコースに集まった大勢のスポンサーや、ギャラリーをどっと湧かせた。
下見の成果を最大限に生かした。
「朝一度、グリーンでラインを確認して、そのあと練習グリーンで練習したことで、良いストロークが出来た」。最高の締めくくりも、1打及ばなかった。

先週は、アブダビで欧州ツアーを戦って、その足でシンガポールにやってきた。長距離の移動は22歳にとっても楽ではなく、「ティグラウンドに立ったら勝つ事だけを考えてプレーをするが、それでもアメリカをベースにしながら、様々な国で戦うことの難しさを感じた」という。

特に悔やまれるのは第2と第3ラウンドだ。「いろいろなことをしようとしすぎてスコアが伸ばせなかった」ともたついている間に、宋永漢 (ソンヨンハン)の逃げ切りを許してしまった。

アジアと日本での初優勝は逃したが、地元ファンは思いがけず5日間も世界一位の勇姿を目に焼き付けて、喜んでくれたはずだ。
「今回はこれだけの移動距離でこれだけのプレーが出来たし、最終的には良い経験でしたよ。コースも素晴らしかったですしね」。
世界一位にとっても波乱の5日間は、充実したものだったようだ。

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