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カシオワールドオープン 2017
シード権の保持がかかる川村昌弘の目標はあくまでも・・・
初日は1オーバーと出遅れたが、この日は一転、67で回って6位タイ浮上。
「これだけ追い込まれると、かみ合うものなんですね」と、からからと笑った。
「あと2日、楽しくポジティブに回れる」と、のほほんと言った。
インドで初日から81、82の大叩きを契機に人生最大のスランプに陥ったのは3月。
「ゴルフの調子自体は悪くないのに、何をやってんだ?」と、自問自答も「今日は特にスーパープレーはないけど、ウェッジで打てる距離からうまくバーディチャンスにつけられた」。
応援に駆けつけた父親の昌之さんにも、調子に見合ったそつないゴルフを見せてやっと少し、安心させた。
「“あなた危ないよ”と、今の状況を、周りが知らせてくれる感じ」と、恐縮した。シード落ちの危機も、「気を遣ってくれる周りの人たちに、気を遣っている感じ」と本人は、まったく気にしていないというのがまた、周囲をハラハラさせる。
シード権争いの選手たちには今大会が、事実上の最終戦。シード権の確保に失敗した選手たちのほぼ全員が、次週は茨城県のセントラルゴルフクラブで行われるファイナルQTのエントリーを済ませる中でも川村はまだ結果が出ないうちから躊躇もせず、すでに真冬の日本を旅立つ手はずを取っていた。
「アジアンツアーは日本よりも“具合が悪い”」と、こちらは賞金ランキング89位からのシード権保持を目指して、モーリシャス島→南アフリカ→インドネシアと最後はおまけのインドツアーで今季を締めくくる予定だ。
「今年ダメでも僕のゴルフ人生が終わるわけではない」。
プロたるもの、どの大会でも常に優勝を目指すと言い切るが、お金には執着がない。
「試合はどこにでもあるから」。
もともとプロを目指した理由も、ゴルフをしながら世界中を旅するのが夢だったから。
日本での居場所には頓着しないが、それでもやっぱり、気になるのは置いていく家族やスポンサーのこと。
「ここで活躍できればいつも気にかけてくださる方にも喜んでいただけるし、ホッとしてもらえたら」。
土壇場で目指すツアー通算2勝目も、ただ心置きなく旅立つためであって、川村にはあくまでもシード権の確保が目的ではないのである。