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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2017

追う優作、追われる小平。運命の最終日

3日目は、最後の鬼門を乗り切った。前日2日目は、4パットのダブルボギーに終わった18番。難易度1位のパー3でこの日は中央に立ったピンに果敢に「バーディを獲る気持ちで攻めたがボールはあさっての方向に飛んだ」と右ラフに落ちた。
「下につけばいいと、薄めに狙った」アプローチはちょっと強く入って一瞬、ピンを越えたが傾斜を伝って左ピン横まで落ちてきた。この日は、しっかりパーで締めた。

今大会では7度目の出場にして、自身初のボギーなしで上がった。宮里が、66で回って通算7アンダーで、ついに首位をとらえた。
「間に合った。よくここまで3日間繋いだ。やっとスタートラインに立ったかな」。
最終日にこそラストチャンスを残して安堵した。

2日目に、ふいに迷いに入ったパットも「今日はハンドファースト気味に構えて押していくイメージで」と、わずか一晩でよみがえらせた。
2週ほど前から課題にしていた100ヤード前後のショットにも、冴えが戻った。

6番のイーグルは、手前のラフからチップイン。
9番は、166ヤードの2打目を7Iで、左手前1メートルに乗せてきた。
14番では112ヤードの2打目も「良い球だった」と、自画自賛も上空の電線を直撃して再度、無罰の打ち直しが今度はカップに入りかけ。

大会前に、クラブハウス横のJTブースに飾る選手写真には「逆転!」と書いてサインをした。
鉄の意志で今年最後の1日に、一番良い形で望みを残したとはいっても逆転の賞金王には、もう勝つしか後がない。
でも「退路はだいぶ前に断ちましたので。優勝できなかったらしょうがないという感じで、そんなにプレッシャーはない」と電話をくれる療養中の父・優さんの言葉どおりに、もはやこの土壇場にも落ち着き払っていられる。

この日3オーバーを打って、通算6オーバーまで落ちた賞金1位の小平。
「個人的には、僕も優作さんを応援している」と言い出した。「勝てなくて僕に、というのは棚ぼた。優作さんは選手会長ですし、優作さんが優勝して獲るのが一番絵になる。ゴルフ界は盛り上がる」。

「何ですかそれ」と、一瞬あっけにとられた宮里。すぐに笑み崩れて「それは遠回しで結婚式に、沢山包めということですか??」と冗談めかして「夫婦で賞金王というのもいい。どっちが賞金王でも盛り上がる」。

小平とて年末に美保さんとの披露宴を控えており、元女王とのひな壇は、絵になるはずだが「それは、やってみないと分からない」と、宮里は軽くいなした。

過去に、シーズン最終戦に勝って賞金王になったのは、片山晋呉だけしかいない。選手会長として、今大会を制したのも、賞金王になった選手もまだいない。
まさに、偉業がかかる最終日も今から結果を想定して、戦い終える前からあれこれ考えてもそれはすべて絵空事。
「あまり絵は描かないように。描きながらいきたいと思います」。
最終日こそ、筋書きのないドラマを1打1打、紡いでいく。

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