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日本オープンゴルフ選手権競技 2019

日本一の飛ばし屋。チャン・キムが8差の大逆転でゴルファー日本一に

涙が止まらない。韓国系米人のチャン・キムが2年ぶりのツアー4勝目を、初の日本タイトルで飾った。
最終ラウンドは、唯一のアンダーパーで快走していた塩見が上りの5ホールで、まさかの9オーバー。

最終ホールの18番で、5メートルのバーディチャンスを沈めて通算1オーバーで、先にプレーを終えていたキムに栄冠が転がり込んだ。

朗報は、プレーオフに備えていた練習場で聞いた。
最終ラウンドは、通算5オーバーの17位タイから出た。
大会史上最大差となる8差からの超ビッグな逆転Vは昨季、味わった苦しみを、思い返せば喜びは倍に。
屈強な飛ばし屋が、地面に小さくうずくまり、こぼれる涙を太い腕で何度もぬぐった。

ゴルファー日本一を決める今年の舞台は、6817ヤードと距離はないが狭いフェアウェイと深いラフ、面積の小さなグリーンは速くうねる。現マネージャーの金魚潤一郎さんは08年、ここ古賀で行われた今大会で永久シードの25勝を達成した片山を支えた。
その時、片山が1Wをバッグから抜いて戦ったことを金魚さんから教わり、キムも最初の2日は刻む作戦を取っていた。
だが、日に日にコースを知るうちに、「僕ならドライバーで、トラブルも越していける。むしろアドバンテージを取れると思った」。
難コースで攻撃に転じた週末、最終ラウンドでは10ホールで1Wを振りぬいた。
コースに張り巡らされた罠を軽々と飛び越えて、ビッグタイトルを引き寄せた。

16、17年共に歴代最高の平均記録でドライビングディスタンス1位に。破格の飛距離を武器に、17年には3勝して賞金レースを争ったが、終盤戦を腰痛のため無念の離脱。
翌18年は左手首の故障も重なり、1試合も出られなかった。

「精神的につらかった」と、今も思い返すと顔色が曇る。
「今までの苦しみを考えると、今日の勝利は意味がある」。
自身の完全復活を、確信するという意味でも申し分ないタイトル獲りには泣かずにいられなかった。

優勝賞金4000万円を加えて、賞金1位に浮上。2年前に獲り損ねた賞金王を、また改めて追いかけていける。
「今年はもちろん、ドライビングディスタンスも狙っていきますよ」と、飛ばし屋日本一も譲る気はない。

次週、日本初開催の米ツアー「ZOZOチャンピオンシップ」にも出場資格がある。
「今回の優勝で、自信を深めることができた。来週は、人生を変える一週間になると思う」。
日本ツアーが誇る飛ばし屋が、堂々と並みいる世界トップを迎え撃つ。

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