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日本プロゴルフ選手権大会 2019

1日遅れの開幕に、鹿児島県勢の思いは

開聞岳に健闘を誓った!!
その年のプロ日本一を決める伝統の大一番である。その2019年大会が、ここ鹿児島県の「いぶすきゴルフクラブ」で行われると決まったのは2015年。
若き県勢たちは、沸き立った。
当時、21歳の稲森佑貴(=写真左)は、初シード入りしたばかり。
ひとつ歳上の出水田大二郎(=同右)は、まだレギュラーツアーの権利も持たなかったが「自分も絶対に出たい」。
昨季は互いに悲願の初優勝を飾り、揃って出場にこぎつけた。

共に、シーズン開幕前からもっとも楽しみにしていた”日本タイトル”。
昨年の日本オープンを制した稲森には、メジャー連勝という偉業もかかっている。
先週の会場でも、地元開催に賭ける思いを語ったばかりだ。
でも今は「開催を喜んでいいのかどうか…」。大雨の影響による、1日遅れの開幕を控えて複雑な思いでいる。

稲森の実家は、鹿児島市内で練習場を営む。
このたびの九州豪雨では、裏山のがけ崩れと打撃場の芝地が浸水の被害を受けた程度で家族や知人の人的被害はまぬかれたが「それも、奇跡だったのかもしれない」。

自宅や最愛の家族を亡くされた方、行方不明の方、今も避難を続けるたくさんの方々がいる。
開催コースの近辺には目立った被害はなくとも、「市内のほうは、大変なことになっている。その中で、自分はゴルフをやっていいのかという気持ちがある」(稲森)。

出水田は、もっとも雨がひどかった1日・月曜日に母親の心配を背に受けながら、鹿屋(かのや)市の実家から、コースに向かった。
すでに高速道路は閉鎖され、国道は大渋滞。
混乱を避けて、錦江湾から愛車ごとフェリーに飛び乗り最短ルートをたどっても、当地のいぶすきまで3時間近くかかった。

その間にも、刻々と明らかになった被害の状況に、複雑な思いは出水田も同じだが「上の方たちが話し合い、開催されると決めたこと。応援に行くと、言ってくださる方もたくさんいる。自分たちで、少しでも盛り上げられたら」。

稲森は「あんなにすごい雨が降って、一歩間違えたらという危険もある中でみなさんこんなに集まってくださるんだ、と。まずその行動力に尊敬します」と、今週の出場144選手が非常事態にかかわらず、誰一人として欠けることなく地元に集ってくれたことにも感謝した。
4日木曜日の初日が中止となり、1日遅れの開幕となるが、役者は揃った。
ここ鹿児島県で男子ゴルフが行われるのは、15年ぶり。
「僕も、やるからには誰よりも勝ちたい」。
昨年のこの大会は、3位に終わった。「その悔しさもバネに出来たら」。
様々な思いを秘めて立つ。

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